酒気を帯びて業務についた社員を懲戒処分できるのでしょうか? | 港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!

酒気を帯びて業務についた社員を懲戒処分できるのでしょうか?

今回は「酒気を帯びて業務についた社員を懲戒処分できるのでしょうか?」を解説します。

 

皆さんの会社の就業規則の服務規律で、「従業員は、次の各項に掲げる事項を守り、服務に精励しなければならない。<略>酒気を帯びて勤務しないこと」と記載されている場合が多いでしょう。

 

これを守らないと、「服務規律違反」で懲戒処分の対象となります。

 

しかし、実際に「処分」となると、なかなか難しいとご相談をお受けします。

 

〇仕事に支障が出るぐらいであれば、処分となるのでしょうが、怪しいレベルでは対応が難しい。

 

〇自動車等の運転をする場合としない場合で、処分の差をつけて良いのでしょうか?

 

等があります。

 

 

これが運転等の業務の場合は、「口頭注意」では済まないのは容易に想像がつくでしょう。

 

では、具体的にどの程度の処分となるのか、参考となる裁判をみてみましょう。

 

<JR東海事件 東京高裁 平成25年8月7日>

 

〇新幹線の運転士Aが業務開始前の点呼を受けた際に、上司から酒臭を指摘され、飲酒の有無を尋ねられ、前夜自宅で飲酒したことを認めた。

 

〇社内基準で点呼時に乗務員の飲酒の懐疑を認めた場合、アルコール検知器の使用を指示するとなっていた。

 

→0.10mg/L以上の値が出たら、乗務不可とする規定となっている

 

〇Aは検知器で検査となり1回目:0.071mg/L、0.070mg/Lの値が検知された。

 

〇その後、複数の上司が酒気を感じたためAは乗務不可となった。

 

〇そして、会社から1日の平均賃金の2分の1を減給する旨の減給処分を受けた。

 

〇Aは、減給処分は「懲戒権の乱用」と主張し、裁判を起こした。

 

〇地裁では、懲戒事由は存在するが、過去の処分例、JR他社との比較でも懲戒権は社会相当性を欠き、濫用したものとして無効であると判断した。

 

そして、裁判は高裁まで行き、次の結論となった。

 

〇本件、懲戒処分は社会通念上相当と認められるとし、有効であるとした。

 

 

この裁判を詳しくみてみましょう。

 

高裁の判断は、酒気帯び状態で勤務した従業員に対する懲戒処分について

 

〇従業員の職種

 

〇酒気帯びの状態

 

〇実際に勤務に就いたか否か

 

〇その影響

 

〇反省の有無

 

〇過去の処分歴等

 

を総合的に見て判断するとしています。

 

 

さらに、この裁判では「新幹線の運転士」という点で「運転士の心身の状態は乗客の生命、身体の安全等に直結する」として、厳しく判断しています。

 

その他の業種でも、冒頭の「酒気帯禁止」の服務規律を持つ会社がほとんどだと思います。

 

「事務職だから関係ない」ではなくて、あまりにひどい社員がいたら、懲戒の対象とするべきです口頭注意からプロセスを踏んで対応してください。