労災だと解雇制限で解雇ができませんが・・・
今回は「労災だと解雇制限で解雇ができませんが・・・」を解説します。
解雇を実施したいが解雇できない期間があるのをご存じですか?
解雇は、会社側の都合によって労働者との労働契約を解除することです。
そして、会社から従業員に一方的に通知するものなのです。
しかし、解雇は労働者に大きな不利益をもたらすため、不公正解雇は法律で禁止されているのです。
また、労働者が解雇後の就職活動に困難を来たすことがないように、次の一定期間については、解雇を一時制限しています。
〇業務上災害により療養のため休業する期間とその後の30日間
〇産前産後休業期間とその後の30日間
このため、これに該当する労働者は法的に解雇ができないのです。
但し、上記の解雇制限期間中であっても、
〇打切補償を支払う場合
〇天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
は解雇することができます。
ただし、いずれの場合であっても、労働者保護のために客観的な判断が必要ですので、所轄労働基準監督署の認定を受けずに解雇することはできません。
そして、半日程度、通院した場合でもこの解雇制限に関連するのでしょうか?
これに関する裁判があります。
<日本マイクロソフト事件 東京地裁 平成29年12月15日>
〇社員Aは顧客企業に対し、商品のサポート、技術セミナー、ワークショップの開発等、各種支援事業をしていた。
〇Aは仕事の稼働率を上げるため、多くの業務を担当するため仕事をどんどん受けたが、期限が守れず、品質維持ができなかった。
〇Aは勝手に残業したり、休日出勤を行ったりしていた。
〇その後、会社はAに対し「承認の無い残業、休日出勤をしないように指示」したが、Aはこれを無視していた。
〇会社は、Aの「今までの状況、今回の対応等」を鑑み、解雇予告を行った。
〇Aは、解雇予告の3ヵ月前に「休日出勤をして左足を骨折する事故」が労災事故なので、解雇は不当と主張し、裁判をおこした。
そして、裁判所は以下の判断を行ったのです。
〇解雇は有効。
〇会社側の主張がとおった。
この裁判を詳しくみていきましょう。
Aが解雇前に起こした労災事故についてです。
解雇制限について、裁判所は「制限はかからない」と判断したのです。
なぜなら、Aは一部休業とし、勤務実績があり、また、所定労働時間以上の実績がある日もあり「休業の事実が認められない」としたのです。
労働基準法19条の解雇が禁止されていますが、適用について
〇あくまでも業務上負傷
〇療養のため休業する機関
が前提なのです。
労働者が業務災害で労働能力を喪失している期間及びその回復に必要な30日間は解雇制限を行うということです。
休業とは「全部休業」を意味するのは当然のことなのです。