即戦力の営業マンを採用したが、期待外れだった場合は?
今回は「即戦力の営業マンを採用したが、期待外れだった場合は?」を解説します。
「即戦力の営業マンが中途入社したと思ったのですが・・・。」このようなお話しをよく聞きます。
そこで、「辞めてもらいたい」「給与を減額したい」等のご相談もよくお受けします。
確かに、期待をして入社した社員が、こちらの思惑と異なり戦力化できなかったら、落胆も大きいです。
このような場合はどんな対応策があるのでしょうか?
これに関する裁判があります。
<ニチネン事件 東京地裁 平成30年2月28日>
〇社員Aは中途採用で、即戦力の営業マンとして期待され入社した。
〇入社1ヵ月後Aの業績が上がらず、営業先の訪問件数も少なく上司から営業活動計画をまとめるように指示された。
〇提出書面の内容が期待とは異なったので、訪問先を増やす等の営業活動の改善を求めたが、売り上げはほとんど無かった。
〇上司は給与の減額にいて、Aの意向を確認することにつき、役員会の了解を得て、Aと2時間半程度の面談を行った。
〇面談内容は「このままだと雇用が継続できないので、退職してもらうか、給与半額支給か」と選択をせまり、明日までに返事が欲しいとして期日を設定した。
〇翌日の面談で、管理部長が「解雇予告手当を支払えばAを解雇できる、辞めるか、給与減額か二択しかない」と告げた。
〇Aは面談後「会社の方針に従う」として、給与が半額となった。
その後、Aは自ら退職し、「給与減額は違法だ」と主張し、裁判をおこした。
そして、裁判所の判断は以下となったのです。
〇給与の減額が「半額」で、従業員側の不利益の程度は著しい。
〇管理部長の「解雇予告手当を払えば解雇できる」との発言は、不正確な情報を伝え、退職か?給与の減額か?の選択をせまり、翌日までに決断するのは、判断の時間が少ない。
〇本件給与の減額の判断はAの自由な意思に基づいてされたものと認められず、減額は無効である(会社側の主張は認められない)。
この裁判では、会社側は給与の減額は本人の「自由な意思に基づく同意の下でされたものであり、有効である」と主張しました。
しかし、管理部長からの不正確な情報、意思決定は翌日にもとめるなど、十分な熟慮期間を与えられない中で、選択を迫られた形となったので、退職を回避し、今後の業績で給与が増えるとされることを期待して減額を受け入れたと認められます。
給与の減額を行うことに「社員の自由な意思に基づく同意を得る以外に、給与減額を行うことができる法的根拠がなかった」のです。よって、この「本人の自由な意思に基づく同意か否か?」が争点となったのです。
不利益の程度の差はありますが、ルールを作成し、間違いの無い運用を実施すれば、給与減額も法的に有効となるのです。
ただし、「単に数字が悪いから下げろ」はできません。
減額の程度、ルール化を行い、厳密に運用することが求められます。