事業場外みなし労働時間は、活用できるのでしょうか? | 港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!

事業場外みなし労働時間は、活用できるのでしょうか?

今回は「事業場外みなし労働時間は、活用できるのでしょうか?」を解説します。

 

 

出張や外回りの営業のように事業場外でなされる業務は、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難になる場合がしばしばあります。

 

この場合、労働基準法は、合理的に対処するために、労働時間をみなし制により算定することができるようにしました。

 

すなわち、労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときには、所定労働時間労働したものとみなされます。

 

この制度の第一の要件は、事業場の外で労働がなされることです。

 

労働の一部が事業場外で行われ、残りが事業場内で行われる場合は、事業場外での労働についてのみ、みなし計算がなされます。

 

これによると、一部事業場外労働において所定労働時間みなしを行う場合は、原則として、事業場外労働に対応する部分の所定労働時間がみなしの対象となると考えられます。 

 

たとえば、午前中は自宅から営業先に直行し、午後4時以降事業場に戻って内勤業務を行う場合は、午後4時までは所定時間労働したものとみなされ、それ以後は実労働時間で計算して合計が労働時間となるのです。 

 

次に、みなし制を適用するためには、労働時間を算定しがたいことが第二の要件となります。

 

労働時間を算定しがたいかどうかは、使用者の具体的な指揮監督や時間管理が及ぶか否かなどにより判断されます。

 

行政解釈(昭63.1.1基発1号)によれば、

 

〇業務を行うグループの中に時間管理者が含まれる場合

 

〇無線やポケットベル(当時は携帯電話がまだ普及していません)により随時使用者の指示を受ける場合

 

〇訪問先や帰社時刻などにつき具体的な指示を受けてその指示どおりに業務を行い、その後事業場に戻る場合

 

以上はこの要件を充たさないとされています。

 

 

最近では携帯電話や携帯端末を使う従業員がほとんどですが、これらにより随時指示を受ける場合も同様と考えられます。

 

したがって、厳密に言えば現在では、外回りで働く営業職やセールス職の労働者のほとんどはみなし制の適用対象とはならないことになります。

 

しかし、外勤の営業マンが頻繁に会社に連絡できない場合等はどうなってしまうのでしょうか?

 

ナック事件(東京地裁 平成30年1月5日)では、具体的な業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、業務に関する指示及び報告の方法、その実施の態様等に照らして、勤務の状況を把握することは、煩雑な事務で不可能な状況でした。

 

よって、会社が営業マンの事業場外労働の状況を把握することは困難であったと判断されたのです。

 

今の時代、情報機器の発達で事業場外労働の要件である「労働時間を算定し難い」ことがあり得るかが問われた裁判です。

 

この裁判では「携帯電話等を所持」していれば、そのことのみで「労働時間を算定し難い時」に当たらないということです。

 

皆様の会社ではいかがでしょうか?