この時間は労働時間になるのでしょうか?
今回は「この時間は労働時間になるのでしょうか?」を解説します。
「労働時間はどこからでしょうか?」労働時間とは業務を行っている時間ですが、業務を行うための待機している手待時間なども労働時間としてカウントしなければなりません。
では、待機(手待)時間とはどんな時間で、なぜ、労働時間なのでしょうか?
実際に業務に従事している場合、業務について実際に作業を行うことはもちろんですが、ある作業が終わった後に、次の作業ができる状態になるまでの間、作業をせずに待機することがあります。
この作業と作業の間の待機時間は、実際の作業を行っていません。
しかし、休憩時間のようにまったく労働から解放された自由時間というわけでもありません。
仮に、待機(手待)時間は作業をしていないので労働時間とはいえないと解することになると、その時間は休憩時間として扱われてしまいノーワークノーペイの原則でその時間だけ控除しなければなりません。
ですから、残業代等の割増賃金額もその分だけ減額されてしまう場合が出てきます。
そして、この待機(手待)時間が労働時間に該当するのかどうかが問題となってきます。
最近では「待機(手待)時間は労働時間である」ということが一人歩きしているようにも見えます。
そこで、これに関する裁判があります。
<南海バス事件 大阪高裁 平成29年9月26日>
〇バスの運転手が運行スケジュールで終点バスターミナルへの到着時刻から次の運行開始時刻が待機時間に当たると主張。
〇待機時間は労働時間なので、この間の時間外賃金等の支払いを求めて、裁判をおこした。
〇裁判は控訴された。
そして、高裁では以下の判断が下されたのです。
〇本件は運行スケジュールで次の運行時刻が明確なので、待機時間は労働時間と認められない(会社側の主張が認められた)。
※その後、最高裁で上告不受理となった。
この裁判では、バスの降車、乗車の準備については、労働時間として認められています。
しかし、それ以外の待機時間は労働時間では無いと判断されたのです。
これは、
〇バスターミナルに設置されていた詰所は多くの乗務員が休憩で使用していた。
〇休憩中はバスを離れて自動販売機等に飲み物を買いに行くことも認められていた。
〇乗務員がバスから離れることができるようバスには施錠可能なケースや運転台ボックスが設置されていた。
〇乗務員は休憩中に乗客対応を断ることが認められていた。
などで待機時間は「労働からの解放が保障されている」と判断され、労働時間とは認められないと結論付けたのです。
但し、
〇指示があるまで待機
〇次の仕事まで休憩
と言うような指示をだすと、危険です。
なぜなら、「労働から解放されていない」と判断される可能性が高いからです。