第258 正社員とパート社員で、通勤手当の差があるのは違法ですか?
今回は「正社員とパート社員で、通勤手当の差があるのは違法ですか?」を解説します。
働き方改革で「同一労働同一賃金」の制度が導入されるとのことで、いろいろな会社が「何をすれば良いのですか?」と問い合わせが来ています。
では、同一労働同一賃金についてみてみましょう。
ガイドラインは、パート社員などの非正規雇用労働者と、正規雇用労働者との間に生じた不合理な格差の改善を目指すものです。
近年、日本では労働者全体に占める非正規雇用労働者の割合が上昇しています。
このような中、労働者の雇用形態を問わず均等、均衡な待遇とし、同一労働同一賃金を実現するために政府はガイドラインを策定しました。
平成30年6月29日に働き方改革関連法が成立し、同一労働同一賃金に関係する「パートタイム、有期雇用労働法」や「労働者派遣法」などは、2020年4月1日から施行予定となります。
ただし、中小企業の「パートタイム、有期雇用労働法」の適用は2021年4月1日からとなっています。
法改正により、中小企業は「2021年4月からなので、それまでに準備をすれば良い」と考えられがちですが、現在、正社員とパート社員等の賃金格差について多くの裁判が存在するのです。
特に、全体の格差を問うものや手当、個別で争うもの等、様々な裁判が見受けられます。
そんな中、通勤手当で差があるケースをよく見かけます。通勤手当についても「同一労働同一賃金」の考え方が適用されるので、もし、社員とパート等で手当に差がある場合は、是正しないと違法とされる可能性が高くなるのです。
これに関する裁判があります。
<九水運輸商事事件 福岡地裁小倉支部 平成30年2月1日>
〇卸売市場で働くパート社員4人が、正社員と同じ作業をしているのに通勤手当と皆勤手当に格差があるのは労働契約法に違反す
ると主張した。(正社員、通勤手当1万円、パート社員5千円)
〇パート社員4人は未払い賃金等計120万円の支払いを求めた。
そして、裁判所は以下の判断を下しました。
〇職務の差異を踏まえても交通費の補てんの性質から相違は不合理と判断。
→パート社員は正社員と比べて通勤時間が短い、距離が短いと言った特別の事情もなかった
〇会社側の主張が通らなかった。
この裁判で、この会社の正社員もパート社員も卸売市場で働き、パート社員は正社員と同じ作業をしているとのことであった。
そして、多くの者が自家用車で通勤しているという点で、両者の相違はなかった。
通勤時間や通勤距離もほぼ同じで特別の事情はなかったのです。
そして、通勤手当の金額を決めるにあたり通勤経路などを調査したこともなく、通勤手当として、正社員1万円、パート社員5千円として、支給していたのです。
通勤手当については、職務内容の差異等を踏まえることでは無く、通勤に対する補てんするものと考えらます。
よって、パート社員と正社員との通勤は変わらず、通勤手当の差異は違法と判断されたのです。