現場に行く移動時間は労働時間でしょうか?
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今回は「現場に行く移動時間は労働時間でしょうか?」を解説します。
建設業の方を中心に現場までの移動時間について、ご質問をお受けすることが多いです。
果たして、移動時間が労働時間になるのか?ならないのか?を考えてみましょう。
所定労働時間内であれば、原則として指揮命令下に置かれていると言えます。
しかし、所定労働時間外ではどのように考えれば良いのでしょうか?
まずは、時間外で「指揮命令下に置かれている」という要件を整理して考えないといけないのです。
〇業務遂行の義務付け
〇場所的拘束が有るか?無いか?
〇行為自体の業務性
以上のことを柱として指揮命令下に置かれているか?いないか?を検討し、労働時間に該当するのか?しないのか?を判断します。
移動時間についても所定労働時間外の移動時間であれば、指揮命令下に置かれた時間かどうかが問題となります。
まず、現場に直行する場合を考えてみましょう。
建設現場に直行する場合は、始業時の労務提供の場所が建設現場ということになるので、建設現場までの移動時間は、通勤時間と同じと考えられ、労働時間には該当しません。
通勤時間は労務提供の履行の準備行為であって、使用者の指揮命令下に入っていないので、労務提供以前の段階に過ぎないのです。
よって、労働時間には該当しないのです。
では、会社への立ち寄りの場合はどのように考えれば良いのでしょうか?
まずは、会社への立ち寄りが任意の場合を考えてみましょう。
始業時の労務の提供場所が建設現場となっており、従業員が任意に会社に立ち寄る場合です。
この場合「立ち寄りを会社が命じていないこと」「会社から車両で移動した場合、運転手、移動時間等移動する従業員の間で決められていた」場合、通勤としての性質として、労働時間では無いと判断された裁判がありました(阿由葉工務店事件 東京地裁平成14年11月15日)。
では、会社への立ち寄りが義務付けられていた場合をみてみましょう。
この場合、会社からの立ち寄り後の移動時間は労働時間と判断されます。(総設事件 東京地裁 平成20年2月22日)
〇事務所に集合することが原則化しており、現場に直行する者はまれだった
〇事務所では、使用者と親方らによる番割りや留意事項等の業務の打合せが行われた。
つまり、会社への立ち寄りが黙示も含めて「命じられて」いれば、労働時間となるのは明らかなのです。
しかし、会社への立ち寄りが指示されているのか?それとも任意なのかは、微妙な場合も多いです。
対応策として現場に出勤する前に会社に立ち寄る必要がないのであれば、現場への移動を直行直帰が原則とし、通勤時間とすることで労働時間に該当しないようにすることが考えられます。
さらに、現場までの交通の手段がない従業員に対しては、会社への立ち寄りを任意とし、交通手段のある従業員にピックアップしてもらうと本人達の取り決めで、会社は関与しないようにします。
これで移動時間の労働時間性を改善できるのです。