中途入社の管理職を解雇するには?
今回は「中途入社の管理職を解雇するには?」を解説します。
先日、「幹部社員(管理職)を採用するにあたってのポイントを教えて下さい」とご相談がありました。
確かに、採用時の面接、筆記試験等を実施しても、その人のことがすべてわかる訳ではありません。
しかも、面接時間も限られているし、仮に筆記試験等を実施しても本当の業務能力まではわからないでしょう。
仮に、採用した幹部社員が期待していた業務をこなせなかった場合はどのように対応すれば良いのでしょうか?
これに関する裁判があります。
<×保険会社事件 東京地裁 平成30年2月2日>
〇学校法人を主たる顧客とする保険代理店で営業を強化するために営業部長を中途採用した。
〇学校法人を主たる顧客とするため、保護者からのクレームは慎重に対応すべきなのに営業部長は反対の対応を行った。
〇部長はガイダンスでも説明は不十分であった。
〇宛名書きにも十分な注意を払わなかった。
→1つひとつの事は小さなビジネス違反であったが、回数は意識が低くかった
〇部長は社内でも、自分の気持ちが害されたら周囲に当たったり、不快な気持ちを蔓延させていた。
〇会社からの指導で改善の兆しもみえてこない状況であった。
→業務能力の向上も見込めない
〇部長はメールを私用アドレスに転送する等、情報管理の意識も低い。
〇部長は会社の指示に従わないだけでなく、会社に取り返しのつかない損失を与えかねない態度であった。
〇会社は部長を解雇し、部長は「不当解雇」として裁判所に訴えた。
そして、裁判所は以下の判断を下したのです。
〇本件、解雇を有効である。
→会社側の主張が通り、勝訴した。
この部長が雇用時に予定された能力を有していないのは明らかです。
そして、これを改善しようともせず、勤務態度が不良であるということは解雇について「客観的、合理的な理由」があると言えます。
そして、解雇の要素として社会通念上相当と考えられるかという点についてです。
会社は従業員6名で、そのうち、社員5名から部長を辞めさせるように嘆願書が出ています。
このような状態で、これ以上勤務態度や能力の改善を待つ余裕が無かったと認められます。
つまり、裁判所は「社会通念上認められる」と判断されたのです。
この裁判で注目されるポイントとして、会社がどの程度、該当する従業員に対して、「勤務態度改善のため、能力向上の教育指導を実施するか」ということです。
新卒者や若年者であれば、教育指導は必須と考えられます。
中途採用の場合で、特に経験値が高く、それなりの処遇で採用する場合は、教育義務については軽減されていると判断され、どのよう業務を行ってもらい、どの程度の成果を期待するのか、明確にすることが大切なのです。
そしてどんな能力が必要なのかを明らかにしておくことが重要なのです。