待機時間は労働時間でしょうか?
今回は「待機時間は労働時間でしょうか?」を解説します。
労働時間か否か?この問題は、「休憩時間と思われる時間」「待機時間」「緊急対応時間」 などで問題となるケースが多いです。
なぜなら、「業務は行っていないが、時間的に拘束されているため、これは労働時間ではないか?」と考える人が多いからです。
このため、過去の裁判をみると多くの事例があるのです。
そして、最高裁等の裁判所の判断は以下となっています。
不活動時間であっても、労働からの解放が保障されていない場合には、労働基準法上の労働時間に当たる。
そして、当該時間において、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。
最高裁の判断で「大星ビル管理事件 平成14年2月28日」では、仮眠時間が「労働時間に当たるか?」と争われた裁判です。
この裁判では、
〇仮眠中でも呼び出しがあれば出動しなければならない
〇仮眠中の待機場所も決まっている
等の前提となっていました。
そして、仮眠時間中は不活動仮眠時間も含めて会社の指揮命令下に置かれているものであり、仮眠時間は労基法上の労働時間に当たると判断されたのです。
つまり、「労働から解放されていない」「使用者からの指揮命令下に置かれている」となったのです。
仮眠の時間は「業務に従事していない時間」ですが、呼び出しがあれば、対応しなければならないという、待機時間なのです。
しかし、緊急対応といっても、そのような場面がほとんどなく、「念のため」と持たされた携帯電話等がある場合、これは労働時間としてカウントされるのでしょうか?
これに関する裁判があります。
<都市再生機構事件 東京地裁 平成29年11月10日>
〇Aは総務課長(非管理職)で、総務、経理業務以外に特定公園施設の運営管理を担当していた。
〇会社からAに対し、携帯電話が渡され「事故等があったら連絡を受けるように」と指示された。
〇Aは休日には貸与された携帯電話を持ち歩いていた。
〇Aは休日で待機していた時間が労働時間に当たるとして、会社に対し、時間外手当の支払いを請求し、裁判を起こした。
そして、裁判所は以下の判断を行ったのです。
○Aはこの業務を担当していても、休日は労働から解放されていた。
〇3年間で1度も呼び出しが無いので休日について、会社の指揮命令下にあったとはいえない。
〇Aの主張する時間外労働は、労働時間とはいえないとして会社側勝訴。
携帯電話は自由に移動できるので、仮眠時間とは大きく要素が異なると判断されています。
以上により、休日の携帯電話を持っていた時間は労働時間では無いと判断されたのです。