子会社でセクハラ、親会社の責任は?
今回は「子会社でセクハラ、親会社の責任は?」を解説します。
セクハラ、パワハラ・・・そしてマタハラ等、ハラスメントの案件は増える一方です。
都道府県労働局雇用均等室に寄せられた職場におけるセクシュアルハラスメントの相談件数が以下となっています。
〇平成25年度・・・ 9,230件
〇平成26年度・・・11,289件
このような中、厚生労働省による初めての職場のセクハラに関する実態調査が2016年3月に発表されています。
実態調査では25から44歳までの女性労働者約1万人から回答を得ています。
その結果、働く女性の約3割がセクハラを経験しているという結果が出ました。
雇用形態別には正社員で34.7%と高く、パートタイマーでは17.8%と低くなっています。
そして、セクシュアルハラスメントを受けた者がとった対応としては、「がまんした、特に何もしなかった」が約6割となっています。
会社側の体制が問題になっているとありますが、会社側も相談窓口を設けて、セクハラへの対応を行う会社も増えていますし、パワハラ防止法の施行で窓口はマストです。
先日、セクハラ相談窓口を設置するに当たり、ご相談がありました。
その会社は子会社を2社持っていますが、相談窓口を本社で設け、子会社の分も網羅したいとのことでした。
これに関する裁判があります。
<イビデンセクハラ事件 最高裁 平成30年2月15日>
〇女性は子会社Aの社員で、親会社の事業場内で働いていた。
〇加害者は子会社Bの社員で、親会社の事業場内で働いていて、女性に交際を要求していた。
〇女性は勤務先上司に相談したが、上司は一般的な予防の注意を朝礼でするだけで、特別な措置を取らなかった。
〇女性はその後も加害者のつきまとい行為が続き、勤務先を退職した。
〇加害者のつきまといが続いたため、女性の元同僚を通じて、親会社の相談窓口に対して女性及び加害者から事実確認をしてもらいたいと依頼した。
〇親会社は子会社Bを介して加害者の聞き取りを行ったが、子会社Bから「事実が存在しない」として、女性に対する事実確認を行わなかった。
そして、最高裁は以下の判断を下したのです。
〇コンプライアンス窓口への具体的な相談状況次第では、親会社が適切に対応すべき義務がある
〇今回の件は、女性が退職後に受けた行為の相談だったので、親会社には責任はないと判断したのです。
この状況を詳しくみてみると、相談内容はあくまでも退職後の話であり、在籍時のことでは無かったのです。
また、いやがらせ行為から8ヶ月以上経過しており、責任は及ばないとしたのです。
しかし、被害者が子会社在職中で、すぐの話であれば、信義則上義務があると最高裁もコメントしています。
ということは、親会社がある程度子会社の社員とも集約して管理する場合等においては、安全配慮に関する義務が発生すると考えられるのです。