裁量労働制を導入するには?
今回は「裁量労働制を導入するには?」を解説します。
裁量労働制とは、労働時間制度の1つで、労働時間を実労働時間ではなく一定の時間とみなす制度のことです。
大きな特徴としては、出退勤時間の制限が無くなり、実労働時間に応じた残業代は発生しないのです。
また、この制度は全ての業種に適用できるものでもなく、適用対象の者は設計者や技術者など法律が認めた業種に限ります。
では、裁量労働制を導入するにはどうすれば良いでしょうか?裁量労働制に労働時間の概念が無いわけでは無く、あらかじめ「月に◯時間働いた」としておく「みなし時間制」が採用されることになります。
仮に、みなし時間が1日8時間だとすると、実際に6時間働いても10時間働いても、制度では「8時間働いた」ということになるのです。
よって、みなし時間が実際に働く労働時間とかけ離れていると、従業員が不満に感じます。
だから、それまでの労働環境を基礎にして労使で決める必要があります。
また、みなし時間についても労働基準法の規制は及ぶため、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える場合は、36協定を結ぶ必要があります。
そして、法定労働時間を超えている場合は、割増賃金を支払う必要があるのです。
裁量労働制を導入するためには、会社側と労働者側 (労使)が労使協定を結ぶことが要件となっています。
そのため、会社が一方的に裁量労働制を導入することはできないのです。
ここで言う労働者とは、労働者代表のことで、社内に労働組合があれば、労働組合の代表で、労働組合が無ければ、労働者の過半数を代表する人物です。
この締結で、具体的な時間配分(出退勤時間)の指示はしないと定め、みなし時間制の規程、長時間働き過ぎた社員の健康確保措置や苦情処理措置も定めなくてはなりません。
そして、この協定は労働基準監督署に届け出なくてはならないのです。
但し、労使の協定を結べばどの業種も裁量労働制を取り入れることができるわけではありません。
業務の性質上、労働者の裁量に委ねる業種のみ、裁量労働制を導入できます。
このことを、専門業務型裁量労働制と言います。
具体的な内容として以下のような業種(一部)が当てはまります。
〇研究開発
〇情報処理システムの設計・分析
〇取材・編集
〇デザイナー
〇プロデューサー・ディレクター
〇その他、厚生労働大臣が中央労働委員会によって定めた業務
これ以外でも裁量労働制が適用となる場合があります。
それは、企画業務型裁量労働制といい、企業の中核を担う部門で企画立案などを自律的に行う者に対して、みなし時間制を認めることです。
企画業務型裁量労働制は、労使委員会を設置し、5分の4以上の多数決を決議するなど、専門業務型裁量労働制より厳格な要件が設けられています。
裁量労働制を導入するに当たり、従業員側と打ち合わせを実施し、ルールを規定で定め、労使協定を締結し所轄の労働基準監督署に提出して、運用開始となるのです。