会社にもとめられるパワハラ対策について | 港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!

会社にもとめられるパワハラ対策について

今回は「会社にもとめられるパワハラ対策について」を解説します。

 

厚生労働省は平成24年1月30日、職場における「パワーハラスメント」の定義を発表し、パワハラの対象には、上司から部下への行為だけでなく、同僚の間や部下から上司への行為も含むものとしています。

 

では、パワハラが発生している状況を会社は放置しておいて、良いのでしょうか?

 

これに関する裁判があります。

 

<加野青果事件 名古屋高裁 平成29年11月30日>

 

〇社員Aは先輩社員BとCに長期間にわたりいじめ、パワハラを受けていた。

 

→Aに対して「てめえ」、「あんた、同じミスばかりして」等激しい口調の叱責行為を繰り返していた

 

〇会社はこの状態を放置していた。

 

〇会社はAを配置転換させたが、十分な引継ぎも実施されなかった。

 

→ 過重な業務を担当させた

 

〇 配置転換後もBとCは頻繁にAを呼び出して、叱責していた。

 

〇その後、Aは強い心理的負荷を受けて、うつ状態に陥り自殺をした。

 

〇Aの遺族らは会社と従業員B、Cに対して、損害賠償を求めて裁判を起こした。

 

そして、裁判は高裁まで行き、以下の判断が下されたのです。

 

〇Aのうつ病は業務の影響により発症したことを認めた。

 

〇B、Cの損害賠償は明白である。

 

〇会社はAの自殺について、予見できたとして、安全配慮義務違反に該当する。

 

→会社側が敗訴した。

 

この裁判を詳しくみていきましょう。

 

第一審でパワハラの存在は確認されたのですが、会社の責任が限定的と判断されました。

 

それは、会社がAの自殺を予見できたか否かという点です。

 

第一審は、会社がAの自殺までは予見できなかったとしましたが、第二審では、BとCによる叱責について会社が制止しないで、改善の指導をしないことについて、心理的負荷が高いと判断したのです。

 

さらに、配置転換後の業務内容や業務分配について、見直しを実施しなかったことも心理的負荷が大きいと判断し、パワハラ、業務不可等で自殺について、予見可能性であったと判断したのです。

 

この裁判の判断が今までの裁判と異なるのは、うつ病等の予見について、今までは、長時間労働を前提として「予見」ができると判断していましたが、事例の裁判は叱責行為のみについてだったのですが、認定基準での判断が行われたのです。

 

パワハラ等のハラスメントの裁判で、会社が責任を負うのは「安全配慮義務違反」「使用者責任」があります。

 

安全配慮義務とは「社員が安全に業務に従事させること」であり、これを怠ると責任が会社に及びます。

 

使用者責任とは「ハラスメントをする上司等を使っていた」ということで、これも会社の責任問題となります。

 

事例の裁判では、安全配慮義務違反について触れました。

 

パワハラは使用者としての会社が逃れられない場合が多く、事前の防止策の強化がポイントなるのです。