管理職の解雇が有効となった事例です
今回は「管理職の解雇が有効となった事例です」を解説します。
会社には「解雇権」が存在して、労務提供ができない社員を解雇する権利があります。
特に、中小企業の場合は「周りの社員への影響が大きいが異動させるところがない」ので八方ふさがりになっているケースがよくあり、解雇をのぞんでいるケースが多いです。
また、経営に携わる「営業部長」や「管理部長」を迎え入れ、実は「実力が無いのでは?」という状況の場合、経営判断を行わないといけない場合があります。
しかし、解雇は本当に厳しいのでしょうか?
これに関する裁判があります。
<アスリーエイチ事件 東京地裁 平成29年8月30日>
〇A(50代)は総合管理職兼営業部長として、採用された。
〇会社は代表者が韓国にある関連会社のCEOも務めていたので、Aは、実質的に日本法人を統括する立場であった。
→7人の従業員の中で最も上の立場
〇Aは在籍した3ヵ月間に新規取引先を1件も開拓できなかった。
〇Aは大手取引先との関係が悪化していたにもかかわらず、有効な対策をとらなかった。
〇代表の了解を得ることなく、経費精算手続きを変更し、社内が混乱した
〇会社はAについて解雇になる客観的、合理的な理由があると判断して解雇を実施した。
〇Aは「解雇は違法」として裁判を起こした。
そして、裁判所は以下の判断をしたのです。
〇解雇は有効である。
→会社側が勝訴
では、なぜ解雇が有効となったのか、詳細をみていきましょう。
解雇は就業規則の事由に該当するとして、行われました。
それは、「勤務が著しく不良で、改善の見込みがなく、職責を果たしていないこと」「勤務成績又は業務能率が不良で向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない」理由で解雇が行われたのです。
Aは総合管理職兼営業部長として採用されたにもかかわらず、新規開拓した取引先は皆無で、Aの採用については営業部長としての業務内容も含まれており、新規取引先の名刺が1枚も出てこなかったのは、開拓に取り組んでいなかったことが認められたのです。
また、Aの営業姿勢が原因で、大手取引先との取引が停止になりかけたのです。
Aはこれに気が付いておらず、売り上げが低迷しており、このことに気づいておらず、有効な手立ても講じていなかったことが認められました。
以上により、解雇事由は明らかに存在し、就業規則に定める解雇理由が存在すると判断したのです。
キャリアの人を中途採用する場合があり、同様の悩みを持つ経営者も現場でみてきました。
これを防ぐには、まずは採用の時に「要求されている職務」を明確にする必要があり、その内容を雇用契約書に落とし込むのです。
特に売上、新規開拓等の場合、数字を記載し、明確にすることで職務の責任を明らかにするのです。
しかし、そこまで明確にしているケースが少なく、おおざっぱな書面となっていることが多いので注意して下さい。