過重労働の認定基準とは?
今回は「過重労働の認定基準とは?」を解説します。
働き方改革で残業時間の上限規制が法律で厳しくなりました。
そして、残業の上限が設定され、これを超えると罰則の対象となるのです。
長時間労働、とりわけ、残業時間数が健康被害と結びつくということで、厚生労働省から労災となる残業時間等の基準が示されて、これに基づいて労災認定が行われているのです。
では、この労災認定となる基準をみてみましょう。
〇1ヵ月の残業が160時間以上の場合:精神障害発病の原因となる可能性が高い
〇2カ月平均の残業が120時間以上の場合:精神障害発病の原因となる可能性が高い
〇1ヵ月の残業が100時間を超える場合:脳、心臓疾患発病の原因となる可能性が高い
〇2カ月~6ヵ月平均の残業が80時間を超える場合:脳、心臓疾患発病の原因となる可能性が高い
残業時間が上記の基準を満たした場合で、社員等が発症した場合、「業務が原因で発症した」ということになるのです。
だから、長時間労働で、残業時間が長い会社は「潜在的なリスク」を常に抱えていることになるのです。
残業時間には休日労働の時間も含まれるのです。
例えば、毎日3時間ぐらい残業して、平日と同じような時間で休日出勤した場合、80時間を超えてしまうことはよくあるのです。
また、この基準を超えていないから大丈夫ということでもありません。
個別事案でこの認定基準を満たしていないケースでも過重労働が認められた裁判もあります。
<半田労基署長事件 名古屋高裁 平成29年2月23日>
〇Aは自動車用品類取付業務を行う会社に社員として勤務していた。
〇Aは自宅で虚血性心疾患のため死亡した。
〇Aの妻は半田労基署長に対し、「死亡は過重な業務に起因する」として、労災保険の遺族補償給付の申請をした。
〇労基署は不支給とした。
→心疾患発症前の残業時間は約85時間〇妻は不支給処分の取消しの訴えを起こした。
〇第一審(名古屋地裁)は「過重労働は認められない」とし、妻の請求を棄却した。
〇妻は上告した。
そして、高裁は以下の判断を行ったのです。
〇原判決(第一審)を取消す。
〇半田労基署長の不支給決定を取り消し、遺族年金等の支給を決定しなければならない。
この裁判を詳しくみていきましょう。
高裁は、時間外労働について次のように指摘しています。
〇発症前1カ月間の時間外労働時間は少なくとも85時間48分、この時間外労働時間数だけでも、脳、心臓疾患に対する影響が発現する程度の過重な労働負荷である。
〇これに加えて、時間外労働の時間において休憩時間がとれなかった時間があった。
〇終業時刻後に時間外労働をしていた時間が存すること。
以上により、過重性の程度が大きかったことになると判断されたのです。
基準を超えていなくても総合的に判断されるのです。