内部告発者の懲戒処分について
今回は「内部告発者の懲戒処分について」を解説します。
皆さんは「公益通報者保護法」をご存じですか?この法律は内部告発を行った労働者を保護するもので、2006年4月1日施行され、施行して10年以上経過しました。
最近では不正会計問題やデータ改ざん問題など企業不祥事に関わる報道が相次いだことや、コーポレートガバナンスの要請などもあり、内部通報窓口への注目度はますます高まっています。
これに関する裁判があります。
<公立大学法人岡山県立大学ほか事件 岡山地裁 平成29年3月29日>
〇A教授は大学理事長に入試改ざんがなされていると告発する書面を提出した。
〇内容は「合格ラインに達していた受験生の実技点数を採点担当の教員が不正操作して不合格にした」との内部告発があった。
〇大学は内部調査委員会を設置し、内部調査を開始した。
〇しばらくして、入試の採点で不正があったと報道された。
〇その後、告発内容に対し、外部委員を含む新たな調査委員会を設置し、調査結果で「改ざんの事実は無い」と発表した。
〇そして、大学はA教授に対し、停職3ヵ月の懲戒処分を行った。
〇A教授は「処分は違法だ」と主張し、裁判所に訴えました。
そして、裁判所は以下の判断を下しました。
〇A教授以外の第三者が報道等に情報提供をした可能性が十分にある。
〇本件停職処分は無効である。
→A教授の主張が通り、大学側の主張は通らなかった
この裁判の詳細をみてみましょう。
もし、公立の学校で、入試の採点で改ざんが行われていれば、公益に関わることとなります。
その場合、それが事実であればもちろん、仮に事実ではなくとも情報提供者がこれを真実であると信じ、かつ、信じるに足りる相当な理由がある場合、懲戒処分は許されないのです。
なぜなら、これは「公益通報者保護法」にかかわる事項だからなのです。
そして、この事件で裁判所は「実技試験の得点を低く変更する操作が行われたと信じる理由につき正当性があったと認定できる」としたのです。
裁判で、情報提供者が特定されていませんが、仮に、A教授だったとしても公益通報者保護法から停職処分は違法であり、無効であると判断されたのです。
内部告発と懲戒処分の関係は、会社の信用失墜の問題と関係していますが、力関係で従業員側を守るために公益通報者保護法があります。
しかし、その有効性を巡って問題が起きているのも事実です。
そして、裁判所の判断は以下の項目をポイントとしています。
「目的の公益性」「告発の方法」「告発の相当性」「告発内容が真実か、信じるにつき相当な理由があること」これらを踏まえて判断が下されています。
しかし、このような事を考える必要のないことが会社にとって良い状態なので、そこを目指さないといけないのでここを目指してください。