解雇より有効な退職勧奨について
今回は「解雇より有効な退職勧奨について」を解説します。
「社員を辞めさせたい・・・」
「問題ある社員を解雇したい・・・」
このようなご相談は会社の規模や時期を問わず、本当に多いです。
しかし、会社は一方的に解雇ができるわけでもなく、多くの社長が悩んでいます。なぜなら、解雇を行うためには、多くの要件が必要となるからです。
そこで、現実的には「退職勧奨」が実施される場合が多く、「会社が従業員を退職させるために退職を勧めてくること」をいいます。
会社をやめるかどうかの判断は、従業員が判断するので、退職勧奨は解雇とは違います。
退職勧奨は、「会社から雇用契約の合意解約を申し入れている、あるいは、合意解約の申し入れをするよう誘っている」ことです。
しかし、「会社から辞めてくれないか?」と言われているわけなので、トラブルとなる可能性が高いです。特に「解雇なのか?退職勧奨なのか?」が争われるポイントとなることがよくあります。
これに関する裁判があります。
<プレナス事件 東京地裁 平成25年6月5日>
〇従業員であったAが会社に退職する旨の退職願を提出した。
〇この退職願を提出した意思表示は退職勧奨による退職の意思表示で「応じなければ、懲戒解雇になる」として無効を主張した。
〇裁判所に訴えて、会社に対し地位確認、賃金支払を求めるとともに、退職願を提出させる際の会社による退職の強要が不法行為
であるとし、慰謝料等の損害賠償を求めた。
そして、裁判所は以下の判断を下しました。
〇従業員側の請求棄却(会社側の勝訴)
この裁判を詳しくみてみましょう。
Aは、退職願の意思表示は「部長の退職勧奨に応じなければ、懲戒解雇になり、退職金も支給されないものと誤解したため」だと考えたのです。
そして、退職の意思表示は「錯誤であり、無効である」と主張したのです。
しかし、Aが退職願を提出することを決断するに至った動機については曖昧で明らかではなかったのです。
そして、面談においては、退職の意思はなかったがその後の電話で退職せざるを得ないと決断したとのことです。
この時、直接の面談ではなく、電話での会話によってそのような決断に至ったとのことですが、誤解が何故その時点で生じたのかも明らかではないところがあります。
また、面談及び電話のいずれにおいても部長が懲戒処分や解雇の可能性等のことついて言っていません。
そして、Aも退職勧奨に応じなかった場合の処遇等に関して何ら言及していないのです。
そうすると、これに基づき退職願が提出されたとすることには疑問と考えられたのです。
また退職願提出は面談から1週間以上の期間があったのです。
この事例から学ぶこととは、退職勧奨をするときに「応じなければ解雇になる」等の圧力をかけることはNGです。
そして、考える時間を充分に与えましょう。退職勧奨は「法的な行為ではなく」、退職を誘うものですが、退職を強要する行為があると法的に無効となる可能性があるので注意して下さい。