残業代は1分単位で支払いが必要ですか? | 港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!

残業代は1分単位で支払いが必要ですか?

今回は「残業代は1分単位で支払いが必要ですか?」を解説します。

 

「残業時間は何分単位で支払えば良いのですか?」

 

「15分単位で残業時間を切り捨てていますが、違法でしょうか?」

 

等のご質問をお受けします。

 

 

では、この質問に回答する前に「労働時間の定義」を復習しましょう。

 

労働基準法の労働時間とは、労働者が使用者の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下におかれている時間とされています。

 

この考えは最高裁の判決で、三菱重工長崎造船所事件(最高裁平成12年3月9日)にも反映されているのです。

 

さらに、タイムカードのみで時間管理を行っている場合は大きなリスクがあります。

 

それは、「打刻時間 = 労働時間」と推定される可能性が高いということです。

 

仮に「タイムカード時間は労働時間では無い」ということを主張するのであれば、「労働時間では無い」という証拠を準備する必要があるのです。

 

<京電工事件 仙台地裁 平成21年4月23日>

 

〇社員の勤務態度には、仕事に対する意欲の消失、緊張感の欠如、初歩的なミス、時間管理能力の欠如が現れるようになった。

 

〇社員が施行した工事につき、改善工事や、やり直し工事が発生するなどした。

 

〇会社は社員に退職をお願いした。

 

〇社員は、会社から自主退職の名目で懲戒解雇理由がないのに懲戒解雇同様の不利益処分を下されたとして、残業代の未払いを合わせて裁判を起こした。

 

そして、裁判所は以下の判断をしたのです。

 

〇解雇に関しては懲戒解雇事由に準ずるものと解するのが合理的である。

 

〇残業代の未払いについては、請求と同額の約400万円を認めた。

 

 

この裁判を詳しくみてみると、社員の行動で「明らかに仕事では無い」ものが散見されたのです。

 

それは、「パソコンゲームを事務所で行う」「事務所を離れて仕事に就いていなかった時間がある」等です。

 

裁判所も、会社の言い分を認めつつも労働基準法の賃金全額払いの原則を採用し、タイムカード時間での支払いを命じたのです。

 

さらに、裁判所は以下のコメントを添えたのです。

 

「会社においては労働者の労働時間の管理をタイムカードで行っていたのであるから、タイムカードに打刻された時間の範囲内は、仕事に当てられたものと事実上推定されるべきである」としたのです。

 

さらに、裁判所は「実際に仕事をしていない時間が相当含まれていること」を認めながらも、除外すべき時間が特定されていない為、社員の請求額の全額を認める判断を行ったのです。

 

この事件では、タイムカードのみを労働時間管理に活用している場合は、原則としてタイムカードに記載された時間から休憩時間を差し引いた時間のすべてが労働時間と推定されたのです。

 

別の裁判でも同様のケースがあり、タイムカードの他に労働時間を把握するエビデンス等が無ければタイムカードの打刻時間が労働時間と推定されるのです。