住宅手当で不正が発覚したら・・・
今回は「住宅手当で不正が発覚したら・・・」を解説します。
住宅手当で「不正受給ではないか?」と言うご相談もよくあります。
〇賃料が安い住居に引っ越したのに届け出ず、高額な以前の家賃で住宅手当の支給を受けていた。
〇一部自己所有名義のマンションを賃貸として契約をし、住宅手当の支給を受けていた。
以上のようなご相談を受け、対策を求められることがあります。
住宅手当の規定は「会社独自で定めることができる」とされているので、ルール等の作りこみが不足していた場合など、後々トラ
ブルとなるケースが見受けられます。
これに関する裁判があります。
<ドコモSC事件 東京地裁 平成28年7月28日>
〇社員Aは自己所有名義のマンション(社員は実父と共有でだと主張)を親から賃借しているとして住宅補助費を受給していた。
〇社員Aは社員B(妻)と結婚し、妻が賃借人となり、住宅補助費を受給していた。
〇戸建を新築し、3階建て戸建の内、1階は実父名義、2階、3階が社員らの名義となっており、実父名義部分を賃借しているとして住宅補助費の申請をして受給していた。
→賃借している部分は倉庫、作業場であり、居住のためでは無かった
〇会社は社員A、B(夫婦)に「住宅補助費の不正受給」があったとして、調査を行い、不正を確認して懲戒解雇を実施し、不正受給分の支払いを求めて裁判所に訴えた。
〇社員A、B(夫婦)は「自己所有部分と合わせて居住に要する場合は、住宅補助費の支給対象から除外されていない」「形式的に支給要件を満たしている」と主張し、懲戒解雇の無効を訴えた。
そして、裁判所の判断は以下となったのです。
〇住宅補助費規程の解釈、適用は「健全な社会通念、条理及び慣習による論理的解釈及び目的論的解釈も考慮されたものでなければならない」とした。
→住宅補助費支給のために実父名義の専有部分を契約したが、実態は住居として使っていない
→社員A、B(夫婦)は支給要件を満たしていない事を分かっていた
〇戸建で通算7年以上、合計500万円以上不正受給をしていた。
〇懲戒解雇は有効である。
→会社側の主張が認められた
裁判所の判断では「自己所有の物件を居住するものであってもその一部を親族に譲渡して賃借すれば、自己所有物件に住みながら、住宅補助費を受けられることになるのは目的に反するとしたのです。
また、会社側は社員A、B(夫婦)に対し、慎重な調査を実施し、事情聴取も実施、そして、本人たちに弁明の機会を与え、十分な時間をかけて判断を下そうとしたのです。
しかし、本人たちは事実発覚後、悪質な態度をとり、住宅補助費の不正受給は経済的な利益を得るためであっただけと判断され、懲戒解雇は有効とされたのです。