退職理由を解雇にして欲しいといわれたら
今回は「退職理由を解雇にして欲しいといわれたら」を解説します。
社員が退職する場合、「退職理由を自己都合ではなく、解雇にできませんか?」という依頼をされる場合があります。
具体的な手続きとしては、「離職票の退職理由の欄に『解雇』と記載してほしい」ということです。
これは退職理由の違いにより下記の違いがあるからです。
○自己都合の場合
・失業保険をもらえるまでに3ヶ月以上かかる
・失業保険をもらえる期間が解雇よりも短いたとえば、35歳(勤続10年)の場合、自己都合なら90日、解雇なら180日となります。
・退職金が解雇の場合よりも低いこともある退職金は会社独自の制度ですが、退職理由で違うことが多いです。
・即日に会社を辞めても、解雇でないため、解雇予告手当はもらえない
○解雇の場合
・失業保険をすぐにもらえる
・失業保険のもらえる期間が長い
・退職金が自己都合の場合より多くもらえることもある
・即日に会社を辞める場合、解雇予告手当がもらえる
このように辞める側にとっては、有利な条件が沢山あるのです。
だから、実態は自己都合であっても、「解雇にしてほしい」という要請があるのです。
しかし、これは【絶対に】やってはいけないことになります。
辞めていく社員の生活もありますが、その見返りとして、会社は大きなリスクを負うことになるのです。
それは
(1)離職票の虚偽記載
(2)解雇予告手当の請求権
が発生するなどです。
まずは、(1)をみていきましょう。
この場合、不正受給については受け取った額を返還し、さらに不正受給額の2倍の額を払わなければなりません。
つまり、辞めた社員に【3倍返し】のリスクがあるのです。
これは辞めた社員の問題に限らず、会社の責任にも関係します。
責任の所在を争う場合、裁判となる可能性が高いでしょう。
それから、(2)についてです。
実際は「本人のため」に行なったことでも、「形式上は」解雇です。
だから、離職票の退職理由の欄にも「解雇」と記載があれば、解雇予告手当が「法的に」もらえることになります。
仮に本人が離職票を持って、労働基準監督署に飛び込んだら「1か月分の給料相当の解雇予告手当を支払いなさい」となるのです。
もちろん、この問題は1人に限ったことではなく、2人3人と続いてしまうことは【よく】あります。
なぜならば、辞めていく社員が在職者にこの話をすることもあるからです。
そうすると、次に辞めていく社員は「自分も解雇にしてもらおう」と期待するでしょう。
辞めていく社員の対応に情をかけた結果、会社がリスクを負っても意味がありません。
情には流されず、適正な判断を行わないと、思いもよらぬコストがかかる可能性があるのです。