育児をしている社員の転勤はOKか? | 港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!

育児をしている社員の転勤はOKか?

今回は「育児をしている社員の転勤はOKか?」を解説します。

 

 
女性も男性と同じ仕事をこなす人が増えています。

 

もちろん、男女雇用機会均等法で男女差別は違法です。

 

しかし、子育て中の社員が仕事と育児を両立させ、かつ、転勤等が可能かとなるとなかなか厳しいのが現実です。 
 

これにつき、育児介護休業法の改正(平成14年4月)は大きな影響を与えています。
 

なぜならば、「労働者の配置に関する配慮」という条文で「事業主は社員の勤務場所の変更をする場合、その社員の子供の養育、家族の介護の状況に配慮しなければならない」という旨があるからです。

 

この規定ができてから、多くの会社では「子育て中の社員は異動させない、転勤させない」となり、いわゆる「腫れ物に触る」ようになってしまったのです。

 

ワークライフバランスが叫ばれ、子育てと仕事の両立をめざしての法改正だったのですが、会社は動きが取れなくなってしまったのです。
 

 

労働局の通達でも「子供の養育、家族の介護をしている社員にとって、勤務場所の変更が勤め続けることを困難にしてはならない。これは子供の養育、家族の介護につき配慮することを事業主に義務づけたものである」となっています。
 

 

これにより、育児中の社員(特に女性)につき、「異動、転勤がどのレベルまでOKなのかがわからない」とご相談を受けることもあります。

 

確かに、法律や通達では「異動や転勤をさせてはいけない」とまでは記載されていません。
 

しかし、「どの程度まで許されるか」も記載されていないため、程度の検討もつきません。 そんな中で、参考となる裁判があります。
 

<ケンウッド事件 最高裁平成12年1月>
 

〇3歳児を持つ女性社員に対し、目黒から八王子への転勤命令が出た
 

〇社員は転勤命令に従わず、八王子事業所に出勤しなかった
 

〇会社は勤務時間、保育問題等につき、できる限りの配慮をすると約束
 

〇社員は転勤命令に応じなかった
 

〇会社は配転拒否により、懲戒解雇を発令
 

〇社員は「これは違法だ」と主張し、裁判となった
 

そして、最高裁の判断は
 

〇この異動は業務上の必要性がある 
 

〇異動先近辺に転居し転勤命令に協力すべき
 

〇社員が被る不利益は「許容の範囲」
 

〇転勤拒否には正当性が無い
 

として、「会社が下した判断は正しい」とし、会社が勝訴したのです。
 

この裁判からわかるとおり、子供の育児のために配置転換、転勤などの全てがいけないということではありません。

 

もちろん、社員1人1人の家庭の状況は配慮しなければなりませんが、業務上の必要性も十分に考慮されるのです。
 

 

だから、子供の養育状況の把握(例:祖父母が同居、幼稚園や保育園の状況)、社員本人の意向を聴収、転勤などをさせる場合は労働条件なども考慮(例:労働時間の短縮)をすることがポイントになります。