幹部社員を採用してみたが、思ったよりも仕事ができなかった | 港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!

幹部社員を採用してみたが、思ったよりも仕事ができなかった

今回は「幹部社員を採用してみたが、思ったよりも仕事ができなかった」ということです。

 

 

これはよくあります。

 

そんな時、皆さんはどのように対処しますか?すぐに解雇でしょうか?

 

まずは、幹部社員に限らず、解雇そのものをみてみましょう。

 

たしかに、解雇は難しいこともありますが、要件が整えばできるのです。 

 

この要件とは

 

①解雇に「客観的、合理的な理由」がある(就業規則等に解雇の理由が記載され、それに基く処分かどうか)

 

例:横領、不正、暴力、遅刻や欠勤の繰り返しなど

 

②解雇に「社会相当性」がある(解雇する事が他の事例や判例と比べてバランスが取れているか)

 

例:遅刻1回で解雇は厳しすぎるので、不当解雇になるということです。

 

 

しかし、社員側に原因の無い解雇もあります。

 

では、ここから幹部社員の解雇について考えていきましょう。

 

例えば、海外の現地法人の業績不振で、出向していた責任者の処遇についてですが、これは本人の責任だけを問うことはできません。    
 

 

これについて参考となる裁判があります。
 

<フェイス事件 東京地裁 平成23年8月>
 

○中国進出のため、現地法人の社長をヘッドハンティングした

 

○社長という役職と高額の報酬が約束された

 

○進出後、現地法人が経営悪化のために撤退

 

○退職勧奨を実施したが、断られたので解雇を実施
 

○現地法人の社長の解雇は無効と主張し、裁判所に訴えた 
 

そして、裁判所の判断は

 

○高額な報酬が約束されている
 

○雇用契約は現地法人の社長という役職を「特定」した契約
 

○実質的に配置転換等も不可能である
 

という理由により、解雇を有効としたのです。

 

つまり、「本人に責任が無くても解雇が有効となった」のです。

 

もちろん、これは幹部社員だったからこそ、出た判決でしょう。

 

だから、一般社員だったら、この判決は出なかったと推察されます。
 

なぜなら、「一般社員は職種の特定された雇用契約ではない」「配置転換の可能性がある」など、社内に留まれる可能性が高いからです。
 

 

もう1つの事例として、エムケイタクシー事件(東京地裁 平成20年)をみてみましょう。

 

これはタクシー運転手が免許を失効したので解雇したところ、運転手から訴えられたものです。

 

そして、裁判所は「清掃職としての配置転換も可能」として解雇を無効したのです。

 

このように、幹部社員の解雇は一般社員とは異なり「他の業務に就くことが難しい」「報酬とのバランスからも配置転換が厳しい」という場合は、比較的に容易に解雇が認められるのです。
 

 

ただし、現実的には退職勧奨を粘り強く実施した後、退職勧奨に応じて退職という流れになるでしょう。

 

それから、幹部社員の解雇をスムーズに導くには雇用契約書に「責任者としての採用、それに見合う報酬」が記載されていることが大前提です。