姿見に省み | 鬱子が音を上げた。

鬱子が音を上げた。

くだらない短編小説をのろのろ上げて、結局音を上げてます。


黒猫を飼った。
真っ黒だ。黒くない部分なんて、爛々と輝く金色の瞳ぐらいだ。




まだ子供だから、とても好奇心が旺盛で、目を離せばすぐにどこかへと駆けていく。蝶を追いかけて草藪へ、他の子を追いかけて他人の庭へ。時には信号を無視して道路へ飛び出すことだってあった。

その度に私は息を切らして、いつまでもあの子を探さなければならない。



探す私の身にもなってほしい、と思ったがあの子が変わってしまったらきっとつまらないだろう。そう思って、考えるのをやめた。





ある日。
猫は鏡を見つけた。私の家にある古びた鏡だ。

姿見のそれはさして手入れもしていなかったのに、埃一つ付けずにそこにあった。
大方、家族の誰かが昔どこかで買って来たのだろう。細やかな装飾がされた鏡は一目で高級なものだと分かる。

外国で買って来たらしく、よく磨かれたガラスの右下には英語で文字が羅列していた。



猫は興味深そうにしげしげと鏡を見つめた後、低く唸り始めた。
どうやら鏡の中の自分を、他の猫だと思ったようだ。雄の本能といった所であろうか。
歯をむき出しにして、背中の毛を立たせて唸り声を上げる。
そんな姿を面白おかしく眺めながら、鏡を見る。猫の傍らにあるはずの私の足。



何故か、やたら色の白い素足だった。はて、おかしい。私は今、栗色のスリッパを履いているはずなのに。視線が徐々に上がって行く。



見たら、だめだ。だめだ、見ちゃいけない。見るな見るな見るな見るなみるなみるな






知らない誰かが映って、ひどく嗤っていた。





そこから走って、逃げた。


あの家にはもう永いこと、行っていない。残っているのかすらも、分からない。

あの猫もどうなったかなんて、知る由もない。



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久しぶりに塗るいホラーでした。


解釈はお好きにどうぞ。

最近の幽霊は後ろ、じゃなくて足元から来るーみたいなことを聞きましたが、止めてくださいよね私、机で書いてるので死角ばっかりなんですが笑


以後、反転で一応説明付けておこうかな。


主人公は虐待をした過去がある親。

三行目より猫の二人称ではなく「あの子」となっているのは、娘の話。

草藪や他人(親戚)の家は虐待から逃げようという意味で、道路に飛び出すは事故に見せかけての他殺。変わってしまう→私の身にもなる→私=大人→成長する→つまらない。



家に鏡があるのに家族が居ないのは別居…とかそんなの。まあ、そこは各々解釈で。

虐待が満足行かなかったため、標的を動物、ペットに変更。娘の面影を重ね合わせて…とした時に鏡に。もちろん映っていたのは娘。鏡の向こうは無論死後の世界。しかし成長だけはしているらしく主人公にとっては成長した娘がダレか分からなかった。

ちなみに猫が唸っていたのは、霊(娘)に気付いたからではなく。のりうつられたから。だから、主人公はさっさと逃げた。終わり。


傘那。//