前回、源義経(みなもとのよしつね)さんが
大陸に渡って、モンゴルの英雄である
チンギス・ハンになった、という説があるって
やんわり話したけど、それはあり得るのか。
今回はそのへんを検証してみよう。
てゆーか、まず義経さんとチンギス・ハンの
ビジュアルをざっくり想像してみてほしい。
義経さんは背が小さくて
戦場を軽やかに飛び回るイケメン。
対してチンギス・ハンは、
背が高くて筋骨隆々。
立派なひげをたくわえた威厳のある剛の者。
ビジュアルだけでこんなにも違う。
だから別人です。
検証終わりー。
てゆーわけにもいかないのでちゃんと検証。
まず家系から。
源義経。
清和天皇から始まる河内源氏の家系。
父・源義朝(みなもとのよしとも)と、
母・常盤御前(ときわごぜん)の子。
常盤御前が産んだ子は3人で、
今若丸(いまわかまる)、後の阿野全成(あのぜんじ)
乙若丸(おとわかまる)、後の源義円(みなもとのぎえん)
牛若丸(うしわかまる)、後の源義経(みなもとのよしつね)
異母兄弟で、義朝さんの3番目の子、
源頼朝(みなもとのよりとも)とは
12歳離れた兄弟だった。
次に、チンギス・ハンの家系。
モンゴルでの伝説上の始祖、アラン・ゴア氏の子、
ボルジギン氏の家系。
父・イェスゲイ・バアトルと、
母・ホエルン・ウジンの子。
本名はテムジンで、史料上では5人兄弟の長兄とされる。
父・イェスゲイはモンゴル部族の有力者だったけど、
テムジン幼少の頃に毒殺されてしまった。
母・ホエルンは夫の死後一族から見捨てられて
5人の子どもを困窮の中、女手ひとつで育てた。
義経さんは河内源氏の名門の子だけど、
父の敗死で立場を失った家系の子。
テムジンさんは、ボルジギン氏の有力家系の子だけど
父の死で一族から見捨てられた子、
という点では似たような境遇にある。
それじゃ次は、それぞれの略歴。
源義経。
1159年、京都で誕生。
1160年、平治の乱で源氏敗北、父義朝死亡。
1160年代、鞍馬寺に預けられる。
1174年頃、15歳頃に奥州平泉へ向かう。
1180年、21歳、頼朝の挙兵に参加。
1184年、宇治川・一ノ谷で活躍。
1185年、屋島・壇ノ浦で活躍。
1185年、頼朝と対立し、追われる立場となる。
1187年、奥州藤原氏を頼る。
1189年、31歳、衣川館で自害。
テムジン。
1162年、テムジン誕生。
1170年代、父死亡、一族から孤立。
1180年代、20代の頃、勢力を広げ部族抗争を勝ち抜く。
1180年代後半、ジャムカらと対立。
1190年代、30代の頃、モンゴル諸部族を統合。
1206年、クリルタイでハンに推戴(すいたい)、
チンギス・ハンとなる。
1211年、金王朝へ侵攻。
1215年、53歳、中部(北京あたり)攻略。
1219年、ホラズム遠征開始。
1225年、63歳、モンゴルへ帰還。
1227年、65歳、西夏遠征中に死去。
義経さんは戦場の英雄だけど、人をまとめられずに
追われて自害することになった。
テムジンさんは部族をひとつにまとめて、
国家のシステムまで作ってモンゴル帝国の英雄になった。
ふたりはどっちも没落貴族の出で
武力が高かったことは共通するんだけど、
政治力の才覚に大きな差があったってことだね。
ビジュアル面での差に加えて、
その点でも大きな違いがあったし、
家系も日本とモンゴルでそれぞれしっかりと差があるから
ふたりが同一人物だったって説は
完全に否定されるんじゃないかな。
じゃあなんで義経さんがモンゴルに渡って
チンギス・ハンになったなんて話が生まれたかというと、
義経さんは江戸時代、
舞台を賑わす悲劇の英雄として大人気になった。
どんだけ人気があったかを示す話にこんなのがある。
江戸時代、歌舞伎とか人形浄瑠璃の
義経さんに全く関係ないお話しの中で
なんの脈絡もなく義経さんが登場。
「ここに現れ出たる義経公!」とアナウンスが入ると
観客がもーどっかんどっかん大喜び!
ただ、ほんっとーになんの脈絡も関係もないので、
「さしたる用もなかりせば、これにて御免。」
別に用はないから帰るね、と義経さんがしゃべって
すぐに舞台袖に引っ込んじゃったらしい。
でもそれを見た観客はやっぱり大喜び。
「今日も義経さん見れたよー!」
「義経サイコー!」
「でもやっぱりすぐ引っ込んじゃった!」
「また顔見せてよー!頼むねー!」
と、一瞬しか出てこない義経さんを求めて
舞台は大盛況だった。
あんまり人気がありすぎて
こんなのが定番ネタになってたらしい。
現代で言うと、夜のメロドラマに
ドラゴンボールの悟空が急に登場して
「おっすオラ悟空!じゃあ急いでっから!またな!」
って飛んでっちゃうみたいな。
本筋の役柄演じてる役者さんは
「何この時間」って、しらーっとしちゃうだろなぁ。
義経さんは江戸時代、
こんな異常な人気があるキャラクターだったから
そりゃもー歴史ひんまげてでも
実は生きてて北海道行ってたんだとか
大陸に行ってチンギス・ハンになって
モンゴル統一したんだよなんて言われたら
「さすが義経さん!かっこいー!」って
大喜びされたんだろね。
このお話しを親友が教えてくれたときには
私もお腹抱えてめっちゃ笑ったもん。
とゆーわけで結論。
江戸時代のエンタメ、なんでもアリ。
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