昭和から見続けている私としては、今相撲というものが残念な方向に向かっているとしか思えません。
横綱とは一体なんなのか。
そんなことをふと考えるのはやはり昨日まで行われていた令和三年の大相撲名古屋場所を観たからです。
横綱が誕生して二百数十年、72人が横綱免許を授与されています。
相撲の神様と称される人から不祥事でやめていった横綱もいます。
横綱昇進時に渡される「横綱免許」には、
品格力量抜群に付横綱に推挙す
としてあります。
ただ強いだけではなく、品格も抜群ではないと横綱とは言えないのです。
さて、ご承知の通り横綱は降格がない為成績が悪くなったら選択肢は引退しかありません。
昔は引退に美学というものがありました。
横綱栃錦は1960年春場所千秋楽は横綱若乃花との史上初千秋楽全勝対決になりました。
残念ながらこれには敗れましたが、その年の初場所は優勝、前年は二度優勝しています。
横綱としては立派な成績を維持している栃錦は翌5月場所、初日から二連敗して突如引退を発表します。
栃錦は横綱が決まった晩に師匠の春日野親方から
「今日から辞める時のことを考えて過ごせ」
と言われたそうです。
この春日野親方(横綱栃木山)も三場所連続優勝した翌場所に「力が衰えてから辞めるのは本意ではない」とし、引退しています。
これが横綱の了見でしょう。
これを見習い、栃錦も桜の花が散るごとく潔い引退となりました。
ただ勝てばいい。
ルール違反以外なら何をしてもいい。
相撲ってそんな悲しいものでしょうか。
ましてや、横綱がそういう了見であっては相撲界もお先真っ暗でしょう。
全力士の手本とされる横綱の誕生を心より待つばかりです。
大相撲のDVDで双葉山引退相撲の映像があります。
それを見ると「横綱」というものが凝縮されているような気がします。
来場所から73人目の横綱が誕生するようです。
技量と共に品格も抜群であることを祈ります。