■過剰な愛
祖母はいつもむせ返るほどの愛で、
僕に接してくれていた。
そのことが僕にどう作用するか?
それはさほど問題ではない。
自分が与えているものは正しい。
その信念で自分を支え、
自身が幼い頃に体験した母の死の欠落を、
なんとかして埋めるためのようだった。
もちろんその欠落に気づくのは、
僕自身が大人になってからだが。
■軋む優しさ
伯父は今でも独身であり、
躁鬱病を患っている。
本人は治ったと言い張るけれど、
その状態で祖母とふたり暮らしだ。
一度、幼い僕にプロレス技をかけた。
あれはかなりの痛みとともに、
僕は思わず泣いてしまったのだが、
その時、伯父は笑っていた。
確かに遊びのつもりなのは分かるが、
いたぶることで悦にひたる表情は、
子供ながらに言葉にならない恐怖を、
肌で感じてしまっていた。
伯父が精神的な病に陥るのは、
それから10年後ほどだった。
■怒る姿
祖父の怒りには誰も手をつけられない。
父が幼い頃には、
日本刀を振り回し、
家族を冬の寒い夜空の下に裸で出し、
怒りに任せて追い回したらしい。
僕自身も祖父が仕事で使う地図を無くし、
それを祖母のせいにして怒り狂う姿が、
今だにまぶたに焼き付いている。
10歳にもならない体で、
祖母をかばったのも、確かあの頃だ。