密室に殺意の花



ボクの名はウタ。
ゲームデザイナーをしている。
今日は友人のキャサリンに連れられ、生け花の個展会場へやって来た。
キャサリンとは龍の寺を舞台に起こった殺人事件で知り合ったんだ。



生け花の世界に興味を持ったのは、少し前に読んだ松野愛子という女性の華道家を取り上げた雑誌の記事がきっかけだった。
彼女は記事の中で家元制度を批判していた。



それが気になったボクは生け花の心得のあるキャサリンに聞いてみると、松野愛子はキャサリンの知人だという事が分かったんだ。
それで紹介してもらえることになったんだけど……



この時はまだ、あの悲しい連続殺人が起こるなんて誰も想像していなかったんだ。



会場には工夫を凝らした数々の美しい生け花が展示されていた。
ボクはその中に着物姿の一人の女性を見つけた。
それが松野愛子だった。



しばらく会話をした後、愛子さんは少し席を外すと言い、その場を離れた。
もう少し話をしていたかったんだけどな。



キャサリンの説明を聞きながら生け花を眺めていると、愛子さんが戻って来た。



すると愛子さんは急に胸を押さえ苦しみだした。
そしてその場に崩れ落ちてしまったんだ。



駆け寄ったキャサリンが呼びかけても返事はない。
愛子さんはすでに息を引き取っていた。



ボクはすぐに警察に連絡した。
キャサリンは友人の突然の死に、ただ茫然と立ち尽くしていた。



外からサイレンの音が聞こえる。
警察が到着したようだ。
あれは狩矢警部!
キャサリンとは顔なじみの京都府警本部の腕きき警部だ。



簡単な事情聴取を終えたボクは、その場を警察に任せ自宅に戻ることにした。
キャサリンはだいぶ動揺していたけれど大丈夫だろうか。



自宅に戻ったボクは事件について考えてみた。
愛子さんが自殺するとは思えない。
ひょっとして家元制度を批判したために……



その時、電話が鳴り出した。
出てみるとそれはキャサリンからだった。
狩矢警部が呼んでいるらしい。
ボクは府警本部へと向かった。



死体の状況から死因は毒物によるものらしい。
自殺の可能性も捨てきれないと狩矢警部は言うが、ボクはそうは思わない。



警察では会場にあった記名帳を元に、会場にいた人物を洗い出すという。



キャサリンは何か考え込んでいるようだ。
そして「話したいことがあるの」とボクに言った。
ボクはキャサリンと一緒に行きつけのカフェへと向かった。



カフェに着くとキャサリンは何か決意したかのようにボクに言う。
「力を貸してもらえないかしら?」と。



言われるまでもなく、ボクも愛子さんが死んでしまった原因を調べるつもりでいた。
そう伝えるとキャサリンは「しばらくはあなた一人で調べてくれるかしら」と言ったんだ。
あれ?一緒に調査するんじゃないの?



しょうがない一人でやるか。
とりあえず愛子さんが所属していた京本流を調べることにしたボクは、京本流の本部のある家元の屋敷を訪ねた。



女中さんがいるぞ。
そうだ、狩矢警部から記名帳のコピーを貰っていたんだった。
当日会場にいた人について聞いてみよう。
まずは家元の京本秋鳳。



そして息子の京本満男。
京本流の理事をしている沢田耕次。



九条球美、梅川静江は京本流の弟子か。



そして小春、小菊の二人は愛子さんの弟子らしい。



関係者の話を聞きたいところだけれど、京本流の人たちは皆出かけているようだ。
しょうがない、愛子さんの弟子に話を聞きに行くか。



ボクは祇園へとやって来た。
小春と小菊はここで舞妓をしているようだ。
けれど会うことができたのは小菊だけだった。
小菊も愛子さんは自殺なんかしないと言っている。



祇園を後にし、府警本部へ行くことにした。
そろそろ検死が終わっている頃だろう。
狩矢警部に尋ねると、簡単に検死結果を教えてくれた。
一般人に教えてもいいのだろうか。
死因は青酸カリを飲んだためだという。
しかしどうやって飲んだかは不明らしい。



ボクはもう一度祇園を訪ねた。
今度は小春と会うことができた。
小春が言うには、愛子さんは家元と意見が合わず、よく言い争いをしていたようだ。



色々分かったぞ。
一度キャサリンに報告に行こう。
ボクの報告を聞いたキャサリンは、青酸カリを飲ませた方法について考えていた。



あの時の事を思い出してみよう。
死ぬ直前に愛子さんは化粧を直しに席を外した。
そして戻って来た途端に苦しみだした……
その時、キャサリンが声を上げた。
「そうよ、口紅よ!」



口紅に青酸カリが塗ってあったに違いない。
キャサリンはそう睨んだようだ。



これは狩矢警部に報告しなくては。
警部に伝えると、すぐに調べてくれることになった。



結果が出るまでの間にボクも調査を進めよう。
京本流の人たちも帰ってきている頃だろう。
ボクは京本邸へと向かった。
そこでボクは家元と面会することができた。



愛子さんと言い争いになったこともあったけれど、可愛い弟子だったと家元は言った。



今は近々開かれる華道大会の準備で忙しいらしい。



家元の奥さんにも話を聞いてみよう。
家元は愛子さんを可愛がっていて、家元を継がせたいとも言っていたようだ。



でも本来は息子の満男が継ぐ立場にあるというが、本人は稽古嫌いで継がせるべきか悩んでいるらしい。



そうだ、華道大会のことも聞いておこう。
京本流から三人の作品が出展されるそうだ。
家元、満男、そして愛子さん。
しかし愛子さんが亡くなってしまったので、他の弟子から一人選ぶことになるらしい。



京本邸を後にしたボクは府警本部を訪ねた。
やはり口紅から青酸反応が出たみたいだ。
やはりこれは殺人事件だったんだ。



まだ会えていない関係者を調べてみよう。
京本邸へ行くと九条球美と会うことができた。



口紅の事を聞いてみたら球美さんと静江さんも同じものを持っていることが分かった。



静江さんにも話を聞こう。
華道大会への出品は、球美さんになるんじゃないかといっているが……



あと会えていないのは理事の沢田耕次と、息子の満男だけか。
まずは沢田さんに会いに行こう。


沢田さんも愛子さんの実力を認めていたようだ。



話を聞いていると玄関の方から声が聞こえてきた。
誰か来たようだ。
忙しそうだから今日はこのくらいにしよう。



最後は満男だ。
満男は京本邸の他にマンションを借りて一人で住んでいるらしい。



愛子さんがいなくなったことでチャンスを手にする人が怪しいと満男は言っている。
本当にそうなのだろうか。



これで関係者すべてに話を聞けたぞ。
キャサリンに報告だ。
いつものカフェに行くとやっぱりキャサリンはいた。
どうやら京本流の昼食会に招待されたらしい。
ボクも一緒だ。



その昼食会の前に華道大会の出品者が決まるという。
愛子さんの代わりを選ぶんだな。



その日、ボクは自室で事件の事について考えた。
球美さんと静江さんは口紅の種類を知っていた。
満男にとって愛子さんは家元を継ぐうえでの障害になる。
明日の昼食会では、関係者の動機をもっと詳しく調べられるだろう。




翌日、ボクは京本邸へと向かった。
昨夜はだいぶ降ったらしい。
3月だと言うのに一面雪に覆われている。



京本邸には多くの関係者が集まっていた。
キャサリンの姿も見える。



午前中に行われた華道大会の選考会では、球美さんが出品することに決まったそうだ。



しかし昼食会が始まろうとしているのに、その球美さんの姿が見えない。
家元は自分が探しに行くと言い、奥さんを伴って席を立った。



そして近くで華道大会のポスターを貼っていた沢田さんも探しに行くと言った。



結局、愛子さんが亡くなったために球美さんにチャンスが回って来たことになった。
嫌な予感がする、キャサリンはそう言った。



その時、どこかで女性の悲鳴が!
しばらく経って、奥さんが転がるように座敷に駆け込んできた。



「球美さんが、お茶室で……」
奥さんはひどく動揺している。



ボクたちは茶室へと急いだ。
茶室の外で家元が球美さんが中で死んでいると叫んでいる。
茶室の中では沢田さんが見張っているらしい。



ボクは茶室へと続く通路を見た。
茶室に向かう足跡が3組、母屋へと戻る足跡が1組残っている。
向かう足跡は家元たち3人のもので、戻る足跡は座敷に駆け込んできた奥さんのものだろう。



そこへ警察が到着した。
狩矢警部に言われ、ボクたちは座敷へと戻った。



ここでもう一度今日の事について確認しておこう。
昼食会が近づいているのに球美さんの姿が見えないことから、皆で捜していたのはボクも知っている。



雪の上に足跡がなかったため、茶室は調べなかったらしい。



雪は朝の内は激しく降っていたが、選考会が終わったころにはやんでいたそうだ。



母屋をくまなく捜したが姿が見えないので、まさかと思いつつ茶室を調べることになったらしい。
茶室には内側から鍵がかかっていたので、もしかしてと思い家元と沢田さんが力づくで開けたと言う。



するとそこには変わり果てた姿の球美さんが……



そういえば満男の姿もないぞ。
こんな時にどこに行ったのだろう。



その時、狩矢警部が座敷に入って来た。
検死の結果、死因は青酸性の毒物だったらしい。



狩矢警部はこれから京本流関係者の事情徴収をするという。
ボクとキャサリンは帰されてしまった。



カフェへとやって来たボクたちは事件について考えてみた。
事件現場となった茶室は、内側から鍵がかけられ密室状態だったことになる。



それからもう一つ。
足跡をつけずにどうやって茶室に渡ったのだろう。
飛び移るには遠すぎる。



もう一度現場を確認する必要がありそうだ。
そんなことを考えているうちに、ボクはいつの間にか眠りに落ちていた。


【第2夜】へ続く



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