私たちのもとにやってくる木材は
様々な地域で育って大きくなり、やがて伐採され、素材として加工されたもの。
木によって、樹齢は異なりますが、少なくとも数十年は森や山で育ったものです。
基本的に材木として購入した木は、自分で伐採しない限り
実際に森や山でどんな風に育っていたのか知ることはありません。
どんな環境にいたのか、周りにはどんな木があり動物がいたのか。
今手元にトチの木片があります。とても面白い表情をしています。
栃やメープルには「スポルテッド杢」という独特の杢目をもった材があります。
黒い筋が模様のようになっているものです。
この黒い筋は、立木の状態でいるときに、木の表面が何かの原因で傷ついたりして
中に水分が入り込み、そこから虫が入ったり、菌が繁殖したりして
シミのようになった部分。なので、成長過程で形成される年輪とは関係のない
模様で、中を割ると不規則に筋のように出てきます。
一般的には、中が傷んだ状態であるため、あまり良材と思われておらず、
材木屋さんによっては、「腐った材」というような扱いで処分されてしまうことも。
しかし、海外ではこのスポルテッド杢は、木材の表情として面白いということで
ギターを作る材にしたり、家具や内装の装飾に取り入れたりと、この木目の個性を活かした使われ方をしています。
今、手元にあるトチの木は、奈良県上北山村の製材所に放置されていたもの。
村の山で数十年育ったトチの木です。村は大台ケ原に近く雨の多い地域。
野鳥や野生動物もたくさんいます。動物にかじられてしまったのか、、
それとも雨ばかりが当たる場所で育ってしまったのか。。。
村の製材所では、やはり、この模様があることで、
あまり良材ではないと扱われていました。
しかしながら、削って磨いてみると、この模様は結構きれいなんですよね。
ちょっと大理石のようにも見えます。自然が作り出す、造形美。
不思議な魅力を持っています。
この木片が、どんなものに使えるかは、これからいろいろと考えていきたい
と思いますが、物の見方を変えれば価値観も変わる。
自然の豊かさや、面白さ、厳しさがこんな小さな木片の中にも
ぎっしり詰まっていると思います。
頭を柔らかく、そして知恵を絞って、これまで使われてこなかった材料も、
素敵なものにして世の中に出していければいいなと思います。