閉店SALEがそんなに長いわけがない -9ページ目

閉店SALEがそんなに長いわけがない

タイトルとは無関係の極私的読書感想文

世の中には、未解決事件というものがあります。

今だに諸説語られる「三億円事件」はその代表格でしょうが、それ以外にも事件の大小を問わず、解明されることの無いまま迷宮入りしてしまう事件というものはよくあります。

そうした未解決事件のなかには、単純に物証が少なく迷宮入りするものもありますが、現場で犯人を取り逃がしたり、確度の高い容疑者に迫っていながら証拠を固められずに逮捕できないケースなどもあります。

その一方で、時の権力者の禁忌に触れる、つまり虎の尾を踏んでしまったあげく未解決にさせられる事件もあります。権力絡みの事件では、真相を知り得る関係者が海外で謎の失踪を遂げた、あるいは滞在先のホテルで変死を遂げた・・・なんてスパイ小説さながらの出来事が実際起きてるのです。当然、私たちは事件の真実を知ることはできないのですが、「このタイミングで、死なないよなあ・・・」なんてゾッとしない思いをしたことは何度もあるでしょう。

『レディー・ジョーカー』では、戦後最大級の未解決事件「グリコ・森永事件」をベースに、政治や部落問題、暴力団など様々なタブーに触れる出来事が次々と起こります。重層的な展開は息苦しく、さらに家族の問題なども相まって、思わず「もうお腹いっぱいです!」と言いたくなってしまいます。

ハードな物語に振り落とされずについていける方、そして長くても筋を覚えていられる方(笑)にはオススメです。


レディ・ジョーカー〈上〉 (新潮文庫)/高村 薫



レディ・ジョーカー〈中〉 (新潮文庫)/高村 薫



レディ・ジョーカー〈下〉 (新潮文庫)/高村 薫



幻となった作品『屍者の帝国』が収録されている著作集ですが、半分以上はウェブで連載していた映画評が占めています。作者の発想の源がわかります。

『屍者の帝国』は本当に序章というか入り口で終わってしまっているのがとても残念なくらい、重層的なプロットを連想させる内容でした。絶筆が惜しいです。

伊藤計劃記録/伊藤計劃


分断されていた国家が悲願の統一を成し遂げる—当時中学生だったボクが見た日本のニュースは、ほとんどこうした側面からの報道だったと記憶している。ベルリンの壁が崩壊した日、壁によじ登った名も無い市民がつるはしで壁に穴を穿とうとする場面、あるいは統一の日、ブランデンブルグ門の上空を飛び交う無数の花火。統一は社会主義という呪縛からの脱出であって、喜ばしい出来事だと、そう伝えていたはずだ。

本書は、喜劇の裏側に隠れた悲劇、光に対する影の部分に焦点を当てている。国家公務員であったはずが、ある日唐突に国家が無くなるとはどういうことか、将来を保証されたエリート学生が、突如としてお先真っ暗になる光景は、あり得ないなあと思いつつ、それがあり得てしまった東独消滅という事態の凄まじさを、改めて突きつけられたような気がする。

ソ連でもない、ヨーロッパでもない場所だった東欧という地域。今ではすっかり塗り替えられた地図をもう一度検証しようとする試みは、東欧革命から20年を経た今、ぼちぼちとおこなわれているようだ。日本には直接関係がなかったが、似たような状況を抱える半島と隣り合っている以上、何らかの形で見つめ直す必要はあるだろうと思う。

東ドイツ解体工場/杉山 隆男