閉店SALEがそんなに長いわけがない -8ページ目

閉店SALEがそんなに長いわけがない

タイトルとは無関係の極私的読書感想文

北方兼三先生の至言「女を抱け!(あるいは吉原に行け!)」でごく一部の男性諸氏におなじみの、週刊プレイボーイの人生相談。その回答者としてリリーさんが吐きまくった名回答をまとめている。

漠然と読んでしまうとバース1号のことしか記憶に残らないのだが、よくよく読んでみると質問に対して本質的な回答をしているように思える。性や仕事や恋愛や、そのときによって質問も様々だけれど、リリーさんは真面目に受け止めた上で、バース1号を勧めます。根が真面目だからこそ軽薄なことも言えるのだと思わされます。

でもやっぱり読み終わってから時間を空けて感想を書くと、バース1号のことしか覚えてなかったりする。

リリー・フランキーの人生相談/リリー フランキー


単行本の表紙の印象だろうか、それとも作者の意図なのか、読み終わる最後まで主人公の顔が思い浮かばなかった。浮かぶのは繊細な指先。商売道具とも、生命線とも言えるスリの指先。

参考文献を見てなるほど、と思った。さすがにスリに話を聞くわけにはいかない。その筋の参考文献が並んでいる。一つ一つの「お仕事」は丁寧に描写され、だから顔は見えずに指が浮かぶ。

警官の血を引く人間としては、心情的にやや腑に落ちない部分もあるにはある。それでも、言葉少ない裏業界の凄みは十分に伝わるし、それが故の理不尽に胸が痛む。

掏摸/中村 文則

警察官や刑事が中心となって物語が展開する小説のジャンルは警察小説と呼ばれています。黒澤明の『天国と地獄』の原案として有名なエド・マクベインの「87分署シリーズ」などは、警察小説を語る際に必ず挙げられる作品です。高村薫の合田刑事シリーズも警察小説になるのかもしれません。

『警官の血』は、日本警察を舞台にしているという意味ではまさに警察小説なのですが、親子三代の警察官による大河的な展開といい、警察官の業務に焦点を当てている内容といい、『警官小説』と呼んで良いのではないかと思います。

物語の縦軸は二つあって、一つは宿命のように警察の道を選んでゆく親子三代を巡る物語。そしてもう一つは、その親子が巻き込まれる殺人事件の犯人探しということになります。しかし犯人は誰かといったミステリー要素は正直なところ薄く、むしろ罪をどのように捉えるか、真実を明らかにすることだけが本当に正しいことなのか、などより根源的な意味合いで犯罪と警察について考えようというものです。

実は、私も警察一家に産まれました。曾祖父、祖父、そして父の三代は警察官であり、彼らは親の背中を見て血を繋いできたのです。私自身は父の姿から警察官を選ぶことはせず別の職業に就いていますが、それが一族として正しいことだったのかどうかはわかりません。ただ本作に触れて、私にはついぞ「警官になれ」とは言わなかった父が何を求めていたのか、それがほんの少し見えたような気がして、切なさとともに申し訳ないような気持ちにもなったのです。

一筋縄ではいかない世界に生きる男たちが、時代や組織に翻弄され傷つきながらも、したたかさを身につけていく、血が濃くなってゆく過程が読める作品だと思います。

警官の血〈上〉 (新潮文庫)/佐々木 譲


警官の血〈下〉 (新潮文庫)/佐々木 譲