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閉店SALEがそんなに長いわけがない

タイトルとは無関係の極私的読書感想文

先月のことですが、作家の井上ひさしさんが亡くなりました。すっかりご無沙汰ですが、小学生の頃、よく読んでいたことを覚えています。

このところの投稿を振り返ってみて、SF・ユートピア小説が多いなあと思ってましたが、ボクにとってのユートピア小説の原点と言えば、井上ひさしさんの『吉里吉里人』ということになります。

東北の一寒村が突如日本からの独立を宣言し、高度な医療体制とタックスヘブン制度によって世界からの注目と指示を一挙に集めようとするのだが、、、というのが大まかな物語です。本作は別にディストピアではなく、本気でユートピアを目指そうとした果ての悲劇となります。

『すばらしい新世界』のラストを読んだ時に、なぜだかふと思い出したのが本作でした。特に設定が似ている訳でもないですが(どちらかといえば『1984』の方が似ているかも)、その悲劇性の中に見えるコミカルな展開が、どことなく似た雰囲気を感じるのです。

いまとなれば、文庫で全三巻、合計1500ページにも及ぶ大部の作品、なおかつ複雑な政治やイデオロギーの絡むストーリーを小学生のボクがどのように消化していたのか不明です。ただ、既存のものをひっくり返そうという作者自身の思想的な部分に、当時のボクが無意識に何かしら感じる部分があったのではないかと思うのです。

懐かしいですね、うんうん。

吉里吉里人 (上巻) (新潮文庫)/井上 ひさし

皮肉です。

まあ小説の世界が文字通りすばらしい新世界に思える人もいるかもしれません。小説に登場する市民達は、世界に疑いを持ちません。ごく一部の異端者(野蛮人)を除いては。

現実社会の尺度から見れば、本作では全体管理社会の異様さや、狂気じみた群衆行動の行き着く先がクローズアップされて見えます。しかし、それを小説の世界だからと言い切れないところに、この小説が現代社会を予見していると言われる所以があるように思えるのです。

さて、ユートピアがユートピア足り得ないことを様々な作品で見せつけられていると、社会が目指すべき方向性の正しさみたいなものがとっても不確かになってきます。本作品が発表されたのが昭和7年。その頃も今も、国家や社会が進もうとしている道にどれほどの違いもないでしょう。それは本作品が色褪せないことが何より証明しています。

だとすると、それがディストピアに陥る、危険を孕んでいるのを承知でなお、古めかしいユートピアへと突き進む動機はなんなのでしょうか。そもそも破綻している物語の辻褄を合わせようとしても、それは難しいでしょう。かといって、今現在のユートピアモデルを否定して原始社会に戻れったってできる訳もなく。

「すばらしい新世界」という皮肉すぎるほどの皮肉が提示している問題はとっても大きいように思えるのですが、そこを乗り越えるだけのものには今のところ出逢えていません。

すばらしい新世界 (講談社文庫)/ハックスリー


挑発的なタイトルですね。買うのに勇気がいります。普通の書店でもちょっとためらわれますが、ボクはビレッジバンガードで買っちゃいます。まあ売ってるんだから別に買ったっていいんですけど。

さて、知ってる人は知っているガッキー(おじさんの方)の本です。骨太なノンフィクションも書けますし、いわゆるノウハウ本的な著作もたっくさん書いてる方です。同意できるかどうかはともかく、自分の立ち位置を明確にする姿勢は見習いたいです。

タイトルからして、一見、手抜き指南のようですが、まったくそのとおり。要するにいかに抜くとこを抜いて力を集中するかというお話です。すべてをやりたがる、なにもかも把握したがる、100点満点にこだわる、というのはいけないわけではないんですが、そんなことできるわけないじゃんとガッキーはおっしゃいます。

時間は誰にも等しく24時間しかありません。猛烈に忙しいビジネスマンでも、赤ちゃんでも、ソーリでも鳩でも鷺でも鴨でも雁でも(後半に悪意)同じです。時間は限られている訳で、やりくりしなけりゃ当然やりたいことができなくなってしまう、と。

ボクの場合は、やりたいこと=本を読むこと、になるんですが、ガッキー曰く「本は一日一冊!」だそうで。んなアホな、と思いますが、薄いパンフレットでも何でもとにかく読んだという行為が大事なようです。このごろ本を読んでいても、こまぎれすぎて内容がわかんなくなる→わかんないから進まない→飽きてくる→それでももったいないので意地になって読む→長期化→普天間問題、の無限ループが多い気がしてます。これこそ時間のムダですね。

つまんなかったら読むのやめちゃえ、ともあります。物騒な発言です。確かに明らかに肌が合わない作家もいますから、撤退するのも勇気だなと思いました。

そんなこんなでいわれた通り、まずガッキーの本から一日で読んでみました。読めました。ガッキー(TOKYO HEARTじゃない方)ありがとう。

100個も鉄則があるので、すべて賛同できる訳じゃあないですが、ひとつふたつと身になりそうなものを実行してみるくらいでいいんじゃないでしょうか。

ラクをしないと成果は出ない/日垣 隆