閉店SALEがそんなに長いわけがない -11ページ目

閉店SALEがそんなに長いわけがない

タイトルとは無関係の極私的読書感想文

『ハーモニー』は、未完で終わった、というかプロットの段階で絶筆となった『屍者の帝国』を除けば、伊藤計劃の最終長編ということになります。語りの巧さ、ストーリーテリングの絶妙な具合は相変わらずで、若干既視感を覚える舞台設定もあるにはあるのですが、それでもやっぱり面白い!です。

ユートピア社会(全体幸福社会)が必ずしもユートピアとならない、つまりはディストピアに陥る皮肉を描いている作品としては、オーウェルの『1984』やハクスリーの『すばらしい新世界』なんかがあるんだと思います。両作ともに古典中の古典、バナナで滑って転ぶくらいの古典ですけど、笑顔の裏側の果てしない絶望を提示していて、現代を予見するようだ、とかいわれてます。

『ハーモニー』が描いているのは市民の皆福祉、皆健康が実現している社会で、病気のない世界。悩みのない世界、誠に結構なことだけれども、それがなぜだか幸せにはならない。

ありとあらゆる苦しみから解放されるとはどういうことか、本書の回答は言い得て妙で、それは宗教的な命題にも近いものを感じた。ある意味宗教がユートピアを求めるものであるからには、この『ハーモニー』的な悟りの境地が、人間の考える「ユートピアの臨界点」ってことになるのだろうか。

伊藤計劃は本書を、病魔と闘いながら執筆したと聞く。己の痛みの中で、登場人物の心理に立ち入れないほどの個人的困難を抱えて書かれた本書は、だからこそ突き放した感情描写やあり得べき未来の歪んだ実相を怜悧に、剥き出しの状態で見せられたんだと思います。

『虐殺器官』にせよ『ハーモニー』にせよ、そして『メタルギアソリッド』にせよ、どこかしら荒廃した寒々とした近未来、拡張現実の支配する情報飽和社会が中心となっている。『屍者の帝国』がどうなったのかはもうわからないのだけれども、そこから踏み出した作品になったとするならば、読んでみたかったなあと思うのです。

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)/伊藤 計劃



ゴールデンなウィークになりました。みなさんはいかがお過ごしでしょうか。

ボクは12時に起きて、2時に朝食を食べて、もうすでに半分以上一日が終わっていることにチビりそうになっているところです。アメブロのランキングなるものに参加していますが、放置(正確に言うと、本が読めないので書くことがない)している間に帯の色がオレンジになっています。カラー柔道着みたいなものでしょうか。よくわかりません。

こんなブログでも最下位にならないところを見ると、世の中捨てたもんじゃないなってちょっぴりチビりそうになります。みんなものぐさすぎです。

そしてこんなブログでも読んでいる(のか、たまたま通りかかっただけなのか)人がいたりいなかったりするのが驚きです。ありがとうございます。最近投稿が少ないですが、やめたわけではありません。ハードなワーキングで目がしょぼしょぼしてしまって本が読めません。

そんなわけで、今日からランキングジャンルを「のんびり」から「よぼよぼ」にしました。よぼよぼですから!腰痛いですから!朝起きるのが辛いですから!突然自分の離婚をTVで知っちゃいますから(時事ネタ)!

さて、ゴールデンは何を読もうか。。。
メタルギアソリッド。

敵を倒しながらすすむのではなく、隠れながら、逃げながらすすむゲーム。

ゲームとはいいつつ長大なムービーを深遠なるテーマ性。

そのあまりにストレートな主張と、くどいほどのメッセージ力に賛否あるようですが、ゲームに飽いていた当時のボクは、MGSの世界観にどっぷりとハマったものでした。

ゲーム自体は数年前にPS3をプラットフォームとして発売された「4」で完結したようです。もはやゲーム以外の娯楽にシフトしているボクには、MGSですらハードを購入する動機とはならなかったので、その結末を知りませんでした。

伊藤計劃を知り、伊藤計劃がMGSフリークだと知り、そして伊藤計劃が「4」をノベライズしているということで今回読むことに相成ったのは全くの偶然でした。

濃厚すぎるストーリーが活字に消化できるのだろうかという思いはあったものの、それは杞憂にすぎないことは読んでみて明らかでした。

MGSを知り尽くす筆者だからこそ、台詞回しやちょっとした所作の脚色にも、キャラクターらしさが宿っています。「4」をやった人には追体験となるだろうし、ボクのように初めてその物語に触れるものには、丁寧なナビゲートで結末へ誘導されて行きます。

要所に伊藤計劃らしさをちりばめつつ、大筋で脱線しない。分類としてはノベライズとなるのでしょうが、凡百のノベライズ小説の域を超えた伊藤計劃作品といってよいと思います。

メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット (角川文庫)/伊藤 計劃