『小説ワンダフルライフ』是枝裕和死者は、自分で選択したたったひとつの思い出を胸に天へ昇る。この映画を初めて観たときに、そのユニークな着想と、なにより素人の出演者が語る人生がすばらしくて、ほっこりした気持ちにさせられました。本作は、映画「ワンダフルライフ」の監督が自ら小説化した物語、ということになります。映画と同様に、物語はゆっくりと進みます。丁寧に紡いでいくことで、自分も思い出の選択をしているような気持ちになりました。ジーンとする、っていうんですかね。秋の夜長にピッタリ(笑)小説ワンダフルライフ (ハヤカワ文庫JA)/是枝 裕和ワンダフルライフ [DVD]
『ヴィヨンの妻』太宰治今回もまた青空文庫からです。最近映画にもなって、どこだかの海外映画祭で賞を穫ったとか穫らなかったとかの話題もあった『ヴィヨンの妻』です。どことなく私小説的な雰囲気を漂わせており、実際太宰はかなりのダメ人間だったわけなので、かなりの部分本人が投影されているのでしょう。まさに愛すべきダメっぷりなのか、女性にはやたらモテているようです。なんか『火宅の人』を思わせる展開ですが、どちらも行き着く先には安住がないのです。それでも結局のところ、バカボンのパパよろしく「それでいいのだ」な感じでいってしまう。実に不思議です。『ヴィヨンの妻』太宰治/青空文庫
『高瀬舟』森鴎外ボクらが書いたものや作ったものには、それがなんであれ著作権という権利が発生します。とっても雑な書き方ですが、この著作権は権利者が没した後、50年経つと効力が喪われます。そこで、そうした著作権が消滅した作家の作品を集めて無料で公開しているのが、「青空文庫」というサービスです。パソコンの画面でそれだけ長い文章を読むのは眼がしょぼしょぼしてしまうのでこれまで青空文庫を利用することはありませんでした。ところが、iPhoneを購入したことで、アプリとして青空文庫に触れる機会が出てきました。実際には青空文庫のデータを読み込むサードパーティのアプリということになります。起動してビックリ、ずいぶん沢山の作品が登録されてるじゃないですか。早速、というわけでいくつかダウンロードしてみました。そのひとつが『高瀬舟』です。表面上見える罪と、対する形で与えられた罰。ところが、その罪と罰には裏表があって、果たして何が正しい選択なのか、と主人公は悩む訳です。裁判員制度との関わりでマスコミでも取り上げられたように記憶しています。短いですが、なかなかに示唆深いお話です。『高瀬舟』森鴎外/青空文庫