その短冊に「30年後には」と付け足した。
「30年後には、入籍できますように」
これはもう、決定事項。
74の智と71の俺。
じいさんになっても元気で…
二人で手繋いで市役所に行って。
ロボットみたいな窓口係に
「おめでとうございます」
そう言わせてみせる。
そんな未来はきっともうすぐそこにある。
俺は、そう思った。
「で…」
「約束守ってもらおうか」
「約束?」
「俺がほしいもん、なんでもくれんだろ?」
「…あー…」
ホント智って…
こういうことも、絶対忘れないんだよな…
「…わかったよ」
「武士に二言はない」
「すきなもん、なんでもやるよ」
俺の言葉に…
「よし!」
なんてガッツポーズをする智。
さすがに不安になって。
「あ、えっと…」
「5万!」
「5万以内で、お願いします!」
思わず上限を設ける。
「えー」
「なんだよそれー」
「武士じゃねーじゃんかー」
「いや俺武士じゃねーから」
「おまえが言ったんだろーが」
「“武士に二言はねぇ”って」
「…わかった、わかりました」
「でも」
「頼むから…」
「常識の範囲内で、お願いします…」
項垂れる俺に…
智は短冊を、差し出した。
「今から俺が言った通りに書け」
わけもわからずペンを握る。
智は言った。
「今日から30年の間に…」
「智と入籍します」
顔をあげる。
智と目が合う。
「おまえには」
「できますように…なんて、願いじゃなくて」
「宣言、してもらわねーとな」
「…俺のものになるって」
「俺がほしいのは…」
「おまえだけ」
「なんもいらない」
「おまえ以外は」
