大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。



先にこちらをお読みください♡








和也 21



その晩…

サトとまた交わった後。


僕はウトウトとまどろんでいた。




昼食も美味かったけど…
夕食の徳州扒鶏(ドーヂョウパージー)
絶品だったな…


あんな、丸ごと一羽の鶏の煮込み…
前は見るだけで胸につかえていたのに。


今まで一切感じなかった芳醇な味わいに思わず
「宮廷料理人が代わったのか?」
と聞いたほど…

僕の舌は魅了された。



フーマ「いえ、代わっておりません」



何を言っているんだ?とばかり…
間髪入れずに返事が来て。


変わったのは自分の舌なのだと知った。




全ては…

サトと…
こうなってから。


僕の死に向かうエネルギーを…
最もシンプルな生の欲求にすり替えた、食えない男。



僕は…
また帰り支度をするサトの背中を見ながら…

そんなことを思っていた。



智「…ほい、これ」



不意に目の前に…

小さなズダ袋が、ぶら下げられる。



僕は何度も瞬きをして…
それを手に取った。



智「ほら、おまえ昨日言ってただろ?」

「俺がいねぇと疼くって」



改めて…
本人から言われると、なんとも変な気分になる。


僕は、布団に潜り込んで…
目だけを出して言った。



和「…それがなに?」


智「シてぇけど、俺がいなくて持て余す時…」
「これ、食え」


和「…食う?」



袋をあけて中を覗く。

輪切りにされた干した赤い果物が、見えた。



和「…なに、これ」


智「あ、知らねぇか?山査子」


和「…サンザシ?」



僕の声に、ふふっと笑ったサトは…


袋から一つ取り出して…


「ほら、アーン」


そう言った。





アーン、て…
なに?


訳がわからなくて…
サトとその手を交互に見る。



智「んだよ、おまえ」
「アーン、したことねぇのかよ?」



こくり…と頷くと、サトは自分の口を大きく開けて、こう言った。



智「ほら、こうやって…」
「アーン、て、開けんだよ」



言われるがままに…
口を開ける。


そこに、サトの手の中にあった赤い干し果実が、放り込まれた。




毒見係を介さずに…
何かを食べたのなんていつぶりだろう。

それも、殺し屋からだなんて…

そんなことを思いつつ、それでも戸惑うことなく口を動かす。



和「…すっぱっ!!」



僕は思わず叫んだ。



味がわからないまま食べたから…
最初は酸味を強く感じたけど。


でもその中に…
確かに甘さも存在する。



智「これ、身体にいいしな?」
「気持ちが落ち着くんだと」


「…不健康なおまえにぴったりだから」
「持ってきてやった」


「これ食って…」
「俺が来るまで、いい子で待ってろ」



言葉は乱暴なくせに…
僕の顔を見つめるサトの目が…

なんだかやけに、穏やかで。



僕の奥底にある何かに、触れるような味がした。





*次回は明日12時
またあおたん家です!