大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。
先にこちらをお読みください♡
和也 8
…本当に、この男なのか?
僕はまじまじと…
『夜伽役』と名乗って通された男の顔を見た。
殺し屋というものは…
もっとこう…
屈強な、岩のような男だと勝手に想像していたが…
目の前の男は。
オーラも纏う空気も…
むしろ穏やか、優しげで。
殺し屋のそれとは程遠い。
背丈も大して僕と変わらない…
猫背の薄ぼんやりとした男。
あ、でも…
顔はよく見ると、鼻筋の美しい整った作りだが。
とにかく気配の薄い、虫も殺せなさそうな男。
そいつは…
僕の顔をみるなりひとこと…
智「…マジかよ」
そう言った。
言葉の意味がよく理解できない。
一体何がマジなのだろうか。
…殺人の依頼についてのことなのかもしれない。
確かに信じ難い依頼だろうな、普通で考えてみれば。
正気の沙汰ではない。
でも僕は…
アンタをずっと待っていた。
長らく誰かを待ち侘びることなんかなかったのに。
もしアンタが殺し屋なら…
まさにアンタは僕が招いた客だ。
僕は…
目の前の人物が本当に僕の客人なのか、確認すべく…
和「何か持ってきた?」
と、尋ねた。
そいつは…
じっと、僕の顔を見つめたまま。
智「…梳子」
とひとこと。
僕が伝えた合言葉を…
はっきりと僕に、投げかけた。
和「…遅い」
「まちくたびれた」
ゆっくりと瞳を閉じながら、そう呟きながら…
僕は近くにあった椅子に身体を預けた。
やっと…
やっと。
僕は、裁かれる。
そして、ここから出られる。
…この男の、手で。
そう思うだけで…
熱いものが込み上げる。
ユッチを亡くした時に…
涙は枯れたと思ったのにな…
上を向いて、涙がこぼれないよう堪える。
ふぅ…と一つ、深呼吸をして。
目尻の涙を拭った僕は。
その男をまっすぐ見つめて、言った。
和「じゃ、早速…」
「連れて行って、もらおうか」
*次回は本日18時
蓮さん家(智サイド)
です!