大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。



先にこちらをお読みください♡(智side)

傀儡師の吻 5

傀儡師の吻 6










和也 7



あれから…
10年という月日が流れた。



いつか座る王の座のことや…
知らぬまに決められた、婚約者。

時の流れと同じように…
いろんなことが勝手に進んでいく。


心を失い…
父上の望むままに、操り人形のように生きてきた僕は、その流れにただ身を任せるだけだった。



そんな僕が、ある日不意に…
自分の命の灯を誰かに消してもらおうと、思い立った。




あの日以来、初めて持った自分の意思。


僕の中にまだ…
自分が存在したことに驚くと同時に安堵する。


僕は、まだ…
僕だった…



僕はその久しぶりに抱いた自分の意思を、殺し屋集団であるイクサラに伝えるべく…
新月の夜、伝書鳩を放った。


誰にも気づかれぬよう、ひっそりと…
でも最も残忍な方法で。
僕の命を、奪ってほしい。


己のくだらないわがままで大切な人を死に至らしめた僕に、自ら命を絶つなんて逃げ道は許されない。


自由になるためには…
ユッチの分まで苦しまなければならない。
そうでなければ、あの世でユッチに合わせる顔がない。


罪深い僕の肉体を、魂を…
全て切り刻んで、砂のようにして…
最初から何もなかったかのようにしてほしい。



僕は…
その祈りを、その強い意思を。
鳩につけた手紙に、込めた。










フーマ「カズナリ様、今宵から夜伽役が参ります」


いつもの無表情で…
父上の犬がそう吠えた。


普段ならコイツの声は、モールス信号のようで。
あくまで司令を受ける機械音のようにしか、耳にはいってこない。


しかし…
今日だけは違った。


夜伽役。


この言葉に…
胸が躍った。



これは、僕を暗殺する殺し屋に与えた仮の姿。


フーマには、かねてから夜伽役を呼ぶことだけ伝えておいたから…

フーマは何も知らない。



ついに…

ついに、僕を…


耐え難い苦しみと、その先の自由に誘う救世主が、やってこようとしていた。



和「…わかった」


胸の高鳴りを気づかれぬよう…

僕は淡々と、言った。


和「おまえは席を外せ」

「…よいな?」







*次回は本日18時
蓮さん家(智side)
です!