ゼノンのパラドックスを知っていますか?
エレノア派のゼノンの議論でパルメニデスを擁護してなされたいくつかの論駁のことを指します。

「多のパラドックス」と「運動のパラドックス」があるのですが今回は運動のパラドックス。

アキレスと亀の話が有名ですね。

しかし、別にゼノンはこのパラドックスで「アキレスは亀に追いつけない」というトンデモ理論を主張したかったわけではありません。

当時、古代ギリシアにはピタゴラス学派と呼ばれる人々がおり、ゼノンは「あの派の主張は誤りである」と批判するためにこのパラドックスを唱えたとされています。

「お前らの主張だとこんな矛盾が発生するんだけど?そんなこと有り得ないよね?おかしくない?」ってマウントとったわけです。

「確かに、この話は間違っている!つまりピタゴラス学派の主張は誤りなんだ!」と。

で、なぜ急にゼノンのパラドックスを記事にしたかと言いますと昨日、近所の子供と勉強しながら世間話していた際に「ガソリンがなくなりそうだからスタンドに寄るとパパが言っだのだけれど0になるなんてあり得なくない?100あったら、その半分は50、その半分は25、その半分は12.5とずっと半分になるよね!」
あー、この子は頭いいなぁと感心してしまいました。以前、お会いした学者さんが「問題を解くことなんて大した才能じゃない。人間の能力で大事なのは問題を発見すること、作ること。問いが出来て仕舞えばあとは答えを出すだけ。簡単だ。」と仰っていましたがまさにその通りですね。
少なくとも私はその事に疑問を持つことはありませんでした。ちなみにこの子は5歳です。



どうでしょう?この子の主張に対して皆さんはどう返しますか?考えてみてください。













答え自体はシンプルなものです。
無意識のうちに「無限に繰り返せる(話が無限に続く)」を「いつまで経っても追いつかない(無限の時間かけても追いつかない)」と混同しているのが問題なんです。先入観が邪魔して本質が見えなくなっています。

アキレスと亀の話は、アキレスが秒速1m・亀が秒速0.1mと考えると1.999999…秒後と無限に繰り返すことができますが、だからといって「アキレスは亀に追いつくのに無限秒かかるか?」と言われると明確に違いますよね。いや、2秒後に追いつくでしょう!と。

回数の無限と時間や距離の無限を混同しているのが原因です。

このパラドックスでは無限級数が有限の値に収束するという数学的にも少し面白い話も含まれています。
普通は「1+1+1+1…」と無限個の足し算をすると答えも無限になりますが、「1+0.9+0.09+0.009+…」では無限個の和であっても2に近づいていくだけなんです。無限の先に有限があります。ちょっと面白いですよね。

ここから話を広げていくと収束、発散の判定法とかの話になります。
級数というのはそもそも和の形で表現されたもののことなのだから「級数」と「級数の和」は結局は同じものを表しているんじゃないのかと素人目には思えてしまう。しかし、数学では収束する先の値が存在するかどうかに気を使うことで、存在しないものについて議論してしまう過ちを厳しく防いでいるのです。

数学の論理の中に無限というものが持ち込まれて以来、こいつが誤った結論へと導く論理の落とし穴となっているんですよね。
交項級数、絶対収束、条件収束とかとかがあって無限級数が収束するのか、発散するのか調べるためのダランベールの比判定法やら冪級数、収束するかしないかの境目はそう幾つもありはしないので三つの場合がある。どんなxを代入しても収束するか、0 以外のどんな値を代入しても発散してしまうか、どこか原点からある距離のところで境目が見出されるか、これらのいずれか。この境目までの距離のことを収束半径と呼ぶとか。冪級数をずらすことで定理言い換えたりとか、収束半径を求めるにはダランベールの方法、コーシー・アダマールの方法、最後の手段でコーシー・アダマールの定理なんてのが出てきたりします。


概念の理解、証明、証明、証明、証明と大学以降の数学は続くわけで。
大学受験までの競技数学がいかに楽しいかわかります。理系で1、2年の数学を挫折せず乗り越えているのなら文系にマウントとってもいいと思います。文系はこの辺以降の数学を理解できるの少数なんじゃないのかなぁ。
かく言う私も理解7割って感じです。
分かっているような、分かっていないような、霞がかかっている感じ。

ゼノンのパラドックスを質問してきた子には私の復習も兼ねて、収束、発散の判定法まで5時間ぐらい説明しましたが最後は疲れて…( ´△`)ってな顔していました。笑

お経聴いているのと変わらないので苦行ですよね。私ならキレていますから。寝ずに聴いているだけお利口でした。途中まではちょくちょく質問挟んできましたし。

ヒートアップすると周りが見えなくなる癖はどうにかしないといけませんね。
反省しています。