前回の「届けられた謎の箱」の続編です。どうしても気になるので書いておきます。

 

 映画「キャスト・アウェイ」の中でのいくつかの謎解きをしましたが、それでも冒頭に登場する「少年ニコライ」の意味が不明でしたのでこの解釈をしてみることにします。

 いま何を言っているのかチンプンカンプンの人は恐れ入りますが、

前回のブログ投稿⇒「届けられた謎の箱」を先に読んで下さいね。

 

 

 「配送品」がベッティーナの夫ディックに届けられた同じ便で、「三角の箱」がモスクワのとあるレストラン風の店に届けられます。レストランにはクリスマスの飾りつけもされています。この箱を店主らしき中年女性が受け取り、受領サインをして傍の少年に何事か言い含めて渡します。少年は中年女性にマフラーを巻き直してもらったあと、脱兎のごとく店を飛び出します。

 

 これは全編を観終わったあとの解釈ですが、この店は上階がアパートメントになったレストランだと思われます。(階段がヒント)このアパートはチャックが新店立ち上げのためモスクワ市内に借りているのです。ですからチャックが自分宛てに発送した「三角の箱」がこの店に届いたという訳ですね。

 脱兎のごとく店を飛び出したニコライ少年は、全速力で赤の広場を通り抜け、モスクワ川にかかるモスクヴォレツキー橋を渡り、開店したばかりのFedexモスクワ支店(MOW)に「三角の箱」を届けます。

 

映画「CAST AWAY」より引用

 

 箱を受け取ったチャックは、ニコライ少年にご褒美を与えたあと、箱の中身は実はタイマーで、自分がメンフィスから発送したものであり、到着までに87時間余りを要したこと、これまでのソビエト時代の流通システムがいかに遅れていたか、を説明し従業員たちを督励します。

 

 なぜこの一連のシーンにニコライが登場するのでしょうか?

 

<検証シーン①>

 レストランの前の柱に取り付けられていたレーニンの肖像が撤去されつつあり、時代が、崩壊したソ連から新生ロシアに変わろうとしていることを見せている。

 

<検証シーン②>

 開店準備中のFedexモスクワ支店の店内にはまだ無気力にうたた寝をするロシア人(旧ソ連人)もいる。

 

<検証シーン③>

 配送品「三角の箱」が「ロシアのニコライに届くまでに…」とチャックが言っている。そしてニコライへのご褒美は、かつて全米を魅了したプレスリーのCD=”アメリカの文化” の意味ととれる。

 

<検証シーン④>

 赤の広場に止められたFedexの配送車から荷物を出し仕分けをさせているチャックの横に、なぜかタイマーを持ったニコライ少年がいて、チックタック・・・と急がせるチャックのアシスタントをしている。

 

 そうです。このニコライ少年は、画面には登場するものの、これから成長するモスクワ支店の表象(イメージ)なんですね。

そして皮肉にも、“時という容赦ない主人”の命令を守ろうとするチャックには、このあと有り余る耐えがたい時間が与えられることになります。