HIMARIちゃんいついてまだ書き足りなかったので続けます。彼女の演奏するツィゴネルワイゼンやチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲については述べましたが、コンテストの2日目のパガニーニ作曲のヴァイオリン協奏曲第2番のカンターヴィレとラ・カンパネラも完璧に演奏してくれました。カンターヴィレはなんとも優しく流れるような音色でした。稀に世にいる、とても技量の豊かな子でも1音の誤りもなく弾くことはできますが、上手なマジックを見た驚きのようなものはあってもそれだけです。HIMARIちゃんの演奏では作曲者の意図する微妙な拍というか間(ま)が性急にならずなんとも心地よいのです。これをわずか8年間(実質的には5年ほど)の人生経験で表現できるとは驚きです。

 

 それから、第3楽章のラ・カンパネラも見事でした。強い音で引き始める瞬間、"ハァ"という気合が聞こえ、気持ちを集中させ顔がわずかにブルッと震えます。これは彼女がやっているという空手の正拳突きの気合を連想させます。後ろで見守っているお母さんも共振するかのように反応しています。彼女はこの曲についても各音の長さを熟知していて、高音を長く伸ばすフレーズではあどけない瞳を宙に浮かせ心の中で拍をカウントしているようでした。

youtubeより引用(部分)

フレーズの終わりの余韻をうっとりと楽しむ余裕さえあり、ピアノの伴奏に促されて “アッ、そうだった” というように演奏を続けます。そして最後の盛り上がりではラッシュで出てくる音符も速射砲のように対応し、見ている審査の大御所がつられてパフォーマンスして照れるシーンもありました。

 インタビューではロシア語で尋ねられ、英語の通訳にも少し戸惑ってお母さんのほうをチラッと見ますが、ひるむことなくちゃんと英語で答えました。

最終日の表彰式ではトップに指名されてチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲第1番を演奏しますが、途中で素晴らしさに感極まった客がパチパチ…と拍手のフライイングをしてしまいます。彼女は一瞬そちらのほうに眼を遣りますが、平然と演奏を続け完奏します。この落ち着き、度胸も並みのものではありません。

 

 その後、12歳になって成長した彼女のパフォーマンスは格段の進化を遂げています。でもあの8歳のときの天使のような純真さ、感性は、“人間ってスゴイ!”と思わせます。私はほとんど毎日のように動画を再生して聴いています。ありがとうHIMARIちゃん。♬♬♬

 

   HIMARIちゃんの頭脳