【憲法第1問】
1.A自治会の総会決議は、A自治会地域住民の憲法上の人権を侵害するものとして無効ではないか。
2.(1)前提として、Aは地方自治法に規定する団体ではあるが地方公共団体ではない(自治法260条の2第6項)ので民間団体であり、地域住民も民間人であるので、そもそも、「民対民」の私人間の関係が「憲法上の問題」となり得るかが問題となる。
(2)思うに、憲法は国家権力を制限しで国民の人権を守る制限規範としての意義を有するものであり、本来国と国民(公と民)との関係を規律する。このため、基本的には民間団体と個人との間を直接規律するものではない。
しかしながら、今日では民間団体であっても国と同様に強大な権力・権限を持ち、個人の人権を侵害する組織も存在する。それにもかかわらず私人間に一切憲法規範が適用されないとなると、個人の人権確保が困難になる。もっとも、憲法規範を直接私人間に適用すると、国家による個人の自由への介入機会を増やし、かえって人権保障を妨げることにもなりかねない。
そこで、私法の一般規定(例えば、民法43条の「目的の範囲」、90条の「公の秩序」、709条の「不法行為」等)の解釈の中に憲法規範を読み込み、妥当な解決を図るべきである。本問では、民法90条、及び43条が問題となる。
3.(1)では、本問決議はどうか。決議により、A自治会地域住民は他団体への寄付を強制されることとなるが、これは地域住民の思想良心の自由(19条)を侵害しないか。侵害すれば決議は民法90条の「公の秩序」に反する無効なものとなる。また、寄付(徴収?記憶不鮮明)をすることはA自治会の「目的の範囲(民法43条)」に含まれない無効なものとなる。
(2)思うに、19条の思想良心の自由は、世界観や人生観に関わるものを言う。思想良心の自由のインフレ化を防止するためである。
そうだとすれば、年間わずか1,000円の金額を、環境向上等の一応の公共目的のために寄付することは、地域住民の思想良心の自由を侵害するとまでは言えない。よって19条には違反しない。
4.(1)しかし、価値観が多様化した今日、個人の尊厳を保つためには、一人ひとりの個人が関わる事柄について、自分自身で選択することができる「自己決定権」が人格的自立権確保の観点から重要であり、これは憲法13条で保障されていると考える。
そこで、A自治会の決議は地域住民の自己決定権を侵害し違憲ではないか。
(2)この点、本問の寄付が公益目的を有する他団体への寄付であり、班長の負担軽減や、年間わずか1,000円であることを考えれば、自己決定権を侵害するとまでは言えないとも思える。
しかし、公益目的とは言っても、寄付は長年実施していると内容的にマンネリ化し意味のないものとなりがちであるし、環境の向上や緑化事業は公共事業の色彩が強く、地域の実力者の収益源になっていることも多い。現に、「集金に応じる会員は必ずしも多くなかった」のが実態であり、寄付は必ずしも多くの賛同を得ていなかったのである。
(3)思うに、環境向上等への取り組みにも多様な方法があり、今日ではNPO法人を設立して事業を行う人も出てきている。そのほかにも多様な参画の仕方があり、個人の判断で行うべき事柄である。したがって、他団体に寄付をするかどうかは、地域住民一人ひとりの個人の選択に委ねるべきであって、強制には馴染まない。
(4)もっとも、「いやならやめればよい(退会すればよい)」と言えなくもない。しかし、実際には自治会を退会するのは困難であり、事実上強制加入である。
5(1)以上のことから、A自治会の総会決議はA自治体住民の自己決定権(13条)を侵害する違憲の性格を帯びるものであり、そのような内容の決議は民法90条の「公の秩序」に反する無効なものと考える。
(2)仮に、決議に基づいて増額会費の徴収がされたような場合には、そのような徴収はA自治会の「目的の範囲」外のもの(民法43条)のものとして無効になると考える。以上
【感想など】
・約75行。再現率85~90%程度。全科目中、憲法が6科目中最もグダグダになった。
・「目的の範囲」で書こうとしたが、なぜか違和感があり90条に。しかし、皆が「目的の範囲」で書くだろうと心配になり、あとから追加。結果的にちぐはぐな感じ。
・19条も大げさな気がしたので、13条を持ち出した。判例は19条と民法90条でよかったようだ。
・A自治会(法人?)の人権享有主体性は書いてるヒマなくてパス。それに、なんとなく公共性が強すぎる気がして、書くのもためらわれた(自治体じゃないけど近いものを感じたので人権享有主体性を書くことに抵抗を感じた)。
・「対立利益」も出していないが、あまり気にしていない。そう言うハナシではないと思うので(住民の精神的自由の優先が明らか。)。