こちらは過去の話になります。

時間軸が前後する場合があります。


義父には晩年までずっと懇意にしていた学生時代の友達たちがいました。

義父が長命だったので、皆さん先に逝かれてしまいましたが。


その中にTさんという男性がいました。

結婚式にも招待されて来てましたし、バス旅行にも初回から参加していました。

哲平を連れて行ったバス旅行も前回同様ハイキングが含まれていました。

夫と私は交代で哲平を肩に背負って歩いていました。

Tさんが横を通った時に、独り言が聞こえてきたのです、


なんでこんな……他にもっといい娘さんがいただろう……。


聞き間違いだと思いました。

私に言う……というよりは本当に1人つぶやく感じだったので。

ただ、心はモヤモヤっとしてました。


実はこのTさん、その後も会うたびに同じようなことを言うのです。

1ヶ月の義実家生活で、つわりより痩せた私ですが、伸び伸び育児をして肥えていきました。

こんな太ってる……とか、なんでこんな……とか。

要約して言えば嫁選びに失敗した……というような内容を……。


言われるのは公の場で、他の人に聞こえない程度の声で言うので言い返すこともできず、私は苦笑いして受け流していましたが、こころの炎🔥はメラメラしていました。


後に、義父の友達の1人が亡くなって、私たち夫婦にもお通夜に参加するように義母から御達しが……考えたらなんで私たちが?と思いますが……。


私は夫に言いました。

Tさんが来るから行きたくない。

またなんか言われる。ショボーンショボーン


Tさんのそばに行かなければいいよ。

あの人変わってるんだから聞き流しておけ。


結局夫婦で参列しました。

お清めの席で他の方にご挨拶をしていたらTさんがやってきました。

逃げようがありません。


本当に太ってるな!なんでこんなに………


また言い始めました。

もう!我慢できない!と思った瞬間、我慢できなかったのは夫でした。


いい加減にしてくださいよ。家内も笑って流してますが、気にしてますから。もうそういうこと言うのやめてくださいよ!ムキームキームキー




Tさんは何も言えずに下を向きました。

ここまで20年以上の月日がありました。

Tさんと会ったのは5、6回くらいでした。

今までは夫のいないところで……あるいは夫に聞こえないくらいの小さい声で言ってたのですが、

この時は夫も耳を敏感にしてたのではっきり聞こえたそうです。


その後Tさんには会うことはないままTさんは亡くなりました。


なぜあんなに私に嫌な言葉を投げたのか……。

ほとんど交流もしゃべったこともないのに。

義父がこぼしてたんだろうな……と思います。

初節句の兜を父親側で買うもんだって言ってやれ!って言ったのはこの人だな……。




理想ばかりを追い求める義父にとって私は理想とあまりにも違ったのだと思います。

私のことは気に入らなかったと思います。


これは、義父の晩年はっきりわかりました。

施設で義母と夫の呼びかけには返事をしましたが、私の呼びかけには視線は合いますが返事をしませんでした。でも嫌な気持ちはなかったです。

おべんちゃらで包むことなく、気持ちのまま素直になれることはある意味羨ましかったです。


でも縁とは不思議なもので、義父が亡くなった時1番にかけつけたのは私で、仕事で遅くなった夫が来るまでの1時間、部屋で2人で過ごしました。

義母はその時入院中で来ることができませんでした。


「お義父さん。不思議なものですね……。

私と2人です。太一さんはもうすぐ来ますよ。

理想とは違う嫁で申し訳ありませんでしたね……。」