2019年8月9日(金)

 

 

PET検査の日。

ユウの自宅最寄り駅のロータリーで待ち合わせをした。

 



7時待ち合わせ。

逆算すると5時起きだ。
昨日の残業は深夜3時すぎだった。
無理をするのは自分の体力が持つ限り全然OKなんだけど、自分が気付かないとこで自分の体が悲鳴をあげ、最終的に自分がダウンしては元も子もないので、そこらへんは慎重に自分の体に敏感に向き合う。

今のとこ大丈夫みたいウシシ


待ち合わせ時間の2分前にユウの車がやってきた。

「おはようさん」ユウが窓を開けて挨拶してきた

見た感じ体調は悪くないよう。

検査入院の弱った姿が、最後に見たユウだったので心配していたのだが大丈夫のようだ。

安心したニコ

「もーにん。本日はお日柄もよく検査日和ですがな」

 

「よし。うん、検査がんばる。泣かない。ジタバタしない」

 

「えっ?PET検査ってそんなにハードなの?」

ネットで調べたけど、そんな感じでもなさそうだったけど・・

「その検査って痛いの?」
「いや、うん。そうだね。うーん。痛くはない」

歯切れ悪い。

ユウが激しく咳き込みだした。

「大丈夫?」
助手席に乗り
ユウの背中をさする

「咳止め、今日は飲んでないんだ」

今はもう薬で抑えているのか?
そう思った私の心を読んだのか
「組織検査のため肺の一部カットしてるんだ。そりゃあ咳もでるさ」
「そうなの?カットしたの?どうせならその時にガンも一緒にカットすればいいのに」
なんと言うか…我が発言ながら安直すぎて怖い
「そんな簡単にはいかんやろ」
そりゃそうだ…。わかっているさ。ちょっと思っただけよ。

PET検査は別の病院でやるようだ。
その病院へ予約時刻10分前に到着し、ユウが受付をする間に待合室で待つ患者の顔ぶれを何となく見渡した。
ほぼ年配の男性だった。その中に若い女性が一人。
PET検査なるものが癌だけに特化した検査かどうかは知らないが、勝手ながら心配になる。 しかも、みんな付き添いがいるのに彼女は一人だった。
みんなそれぞれに戦っている。
何となくそう思ってしまった。

受付後、少し待たされユウの名前を看護師が呼んだ。
ユウが軽く手を挙げ立ち上がる。その看護師がユウに気付き、近寄ってきた。
そして私に向かって
「医師がこれから検査方法の説明をしますが、もしよろしかったらご家族の方も一緒に聞かれますか?」と聞いてきた。
一瞬、戸惑う。 私が聞いていいの?聞きたいけど私、まだ家族じゃないけど家族のフリして聞いていい?? ねぇ、ユウ? 目で尋ねる
この返答を躊躇した一瞬の間をユウがどう読んだのか
「いや、今日は自分一人で聞きます」
と、ユウが看護師さんに言い、「じゃあ、いってくるわ」と私の頭をポンポンして、扉の向こうの検査室へ入って行った。
その後ろ姿を見送りながら目に涙が浮かんだ。

この今の感情は自分でも何なのかは分からなかった。

 

検査は3時間ほどかかるようだ。
待合室のソファーは一人掛け仕様で広くゆったりしてて座り心地良かった。
こうやって付き添い人が待つことを想定して用意したものなのだろうか?
私は電子本を読みながら過ごした。

 

 

 

予定通り3時間ほどしてユウが戻ってきた。
疲れきった顔をしてる

「おつかれさま。痛かったの?疲れたの?大丈夫?」
「いや、痛くはないけど、ちょっと…」

また歯切れが悪い。
今度は深追いして私は聞く

「ちょっと、なに?」

「いや、ちょっと…」

このくだりを三度ほど繰り返した後、ユウが重い口をやっと開く

「閉所恐怖症なんだよ」
私「!」
むむ。そうだったのか。
閉所恐怖症の意味は分かるが、知識がほぼない。原因や対処法やツラさなど。
引き出しがない分、閉所恐怖症に対してのコメントは「大変だったね」としか言えなかった。

会計を済ませ外に出ると、うだるような暑さだった。

車の中でユウが検査中の話しをしてくれた
カレは検査中に叫んだようだ…

『いや〜もう無理ですから
聞こえてますか〜
いやーマジ気持ち悪いんです
助けて下さい

若干泣き顔
しかも2回くらい繰り返す

でもスルーされ、もうええわって
なった…』

そんな話しだ。
ユウの話から閉所恐怖症の深刻度が全く読めない。


そして、飯行こうぜ、腹減った〜、と言った。
本当はウタを抱きたいけど、今日は2時には家に戻るって親父に言ってきたから戻らないと、とも。
兵庫から来られているご両親。お父さんの方は検査に付き添って行きたかったのをユウは『一人で行くから大丈夫』と若干かぶせ気味に断ってきたらしい。(さすがに私と行くとは言えなかったよう)

私 「食欲も性欲もあるのね」
癌ってそういうものなのだろうか?素朴な疑問。
ユウ 「トリプルEや」
なんじゃそりゃ?
ユウ 「栄養。笑顔。エロ」
むむっ?
ユウ 「俺なりに調べて、病気に勝つために必要なものを導き出した。ウタといたら笑顔とエロはパーフェクトだ。あとは栄養は自分でこれからちゃんと気をつける。あまり栄養を摂ってもダメみたいだし」
真顔だ。
う、うん。そうか。笑顔とエロ。私で満たされるなら何よりだ。

ユウの家の近くのレストランでピザとパスタのランチをそれぞれ頼みシェアした。
美味しくてボリュームがあった。
最近食欲のない私だが、ここは無理して食べた。
ユウは私のモリモリ食べる姿が以前から好きだった。

見てて気持ちがいいと。

 

そして私が少し痩せたことをユウは気にしていた。

それもあり無理をした。
私の向かいの席でモリモリ食べているユウを見て、もしかして彼も同じ?一瞬そんな気がした。

レストランから朝待ち合わせした駅まで送ってもらう途中、ユウは自宅に寄り道をした。家の前を通り過ぎた時、
「家、ここだから。駅から近いよ。すぐに覚えられるから。」と言った。
どういう意味の発言?読めない。そして聞けない。

私はいつユウの自宅にお邪魔する日がくるのだろうか?招いてくれるのだろうか?

そして
「俺、誤診だと思う」
と突如ユウが真顔で言った。

 

誤診なわけない。町のお医者さんが一瞬でわかったくらい、分かりやすくなった癌だ。
私はウソが言えない(そうかもね)の一言を発することができず黙ってしまった。


ユウが続ける
「本当は怖いんよ。15日が怖いんよ。」

 

私はそう言うユウの背中を擦るしかできなかった。

ユウの時間計算はほぼ狂わない。
予定通りの時間に私を駅に送り届け、
「14日、覚悟しろよ。むっちゃ抱いたるからな。」とニヤける。
「はいはい。口だけ番長。またね」
私は助手席を降りドアを閉め、ユウに手を振り改札口までの階段を一気にのぼった。

 

 


ユウが私を抱くのは不安を紛らわせる為?


よしっ。上等だ。