船村徹先生、伍代夏子さん、ちあきなおみさん『矢切の渡し』 | 月刊歌の手帖 編集部ブログ

歌の手帖6月号では、

2月16日に逝去された

船村徹先生の巻末楽譜特集

を担当したんですが、

偶然、

ソニーさんから

「伍代夏子さんが、

3月29日に

船村先生の故郷で

コンサートをしますので、

取材に来ませんか?

船村徹記念館の横に

あるホールなんですよ」

というお誘いがあったので、

これは渡りに船とばかりに、

栃木県日光市まで

ソニーの

スタッフさんに

連れて行ってもらいました。

 

伍代夏子さんの新曲『肱川あらし』

は、昔から船村先生に

曲を書いていただくのが、

夢だった伍代さんにとって、

念願の船村メロディー。

そして、このコンサートは当初、

船村氏の文化勲章受章記念として、

船村先生も出席して、

伍代さんが唄うステージの予定でした。

しかし、船村先生が逝去されてしまい、、

追悼のステージとなってしまったのです。

『肱川あらし』は船村先生らしい、

味わいあるスリリングなメロディーが

ドラマティックに響く演歌作品。

喜多條忠先生の歌詞も個性的で、

好評ヒット中です。

 

さて、

栃木県の日光街道本陣

多目的ホールで行われる

そのコンサートを前に、

その横にある船村徹記念館を

取材しに行ってきました。

そこにあったのが、

船村徹作品のシングル・ジャケット写真が

ずらりと並んだコーナー。

それを眺めていたら、

一点のジャケット写真に目が止まりました。

そう、

ちあきなおみさんの『矢切の渡し』。

実は6月号の巻末楽譜特集を

担当するにあたり、

色々な船村徹作品を改めて聴いて、

楽譜に入れる選曲をしたのですが、

コロムビアから発売された

ちあきなおみさんバージョンを聴いて、

この歌がとても好きになりました。

 

元々は同作品、

船村先生が

ちあきなおみさん

に書いたんですが、

その数年後、たくさんの歌手が競作。

その中で、

細川たかしさんのバージョンが

一番売れて、

この歌と言えば、細川さんの

イメージが強くなりました。

 

でも、今回調べていたら、

この歌を作った船村先生自身は

「やはりオリジナルの

ちあきなおみの『矢切の渡し』が、

私のイメージに一番近い」

と語っていたのを知り、

そのオリジナルを

聴いてみたくなったのです。

 

実はちあきさん、

コロムビアさんから、

その後、テイチクさんへ移籍し、

そこで『矢切の渡し』を新録音

しているんですけど、

僕はそのテイチクさんの

新録音バージョンしか聴いたことが

なかったんです。

なので、

コロムビアさんにお願いして、

ちあきさんオリジナルの

『矢切の渡し』の

音源を手に入れました。

 

これが良いんですよ。

船村先生はこういう歌世界を

書いていたんだ…と。

もちろん、細川さんバージョンも

大ヒットしただけあり、

魅力的なのは間違いありません。

 

ただ、

ちあきさんバージョンと、

細川さんバージョンでは、

同じ『矢切の渡し』でも、

そこに表現されている

風景、

情感、

その色彩感、

世界観が

かなり違うんですよね。

 

 

僕はちあきさんバージョンの

オリジナル『矢切の渡し』

に感動して、

6月号の船村徹先生の

巻末楽譜特集の

『矢切の渡し』楽譜は、

そのちあきさんバージョンで

掲載しました。

 

もし聴いていない方がいらしたら、

ぜひコロムビア盤のオリジナル、

ちあきなおみさん『矢切の渡し』を

聴いてみてほしいです。

なお船村徹記念館の住所は、

栃木県日光市今市719番地1号。

歌好きな方の、

ゴールデンウィークは、

ここへ遊びに行くのは、

いかがでしょうか。

船村作品を聴けるコーナーもありましたから、

そこで『矢切の渡し』を聴き較べて

みるのも面白そうです。

歌い手によって、

作品って変わることを

理解してもらえると思います。

 

あと、船村徹先生って、

重厚な演歌を作る

大御所の作曲家、

というイメージですが、

実はもっと深い方なんです。

カルトな音楽好きには有名な

『スナッキーで踊ろう』とか

シュールなGSロックですから。

また村田英雄さんに書いた

『王将』も、

西洋音楽と浪曲を融合させたい、

という意思で

作られたそうです。

 

もう一つ有名な話ですが、

イギリスのオーディションに

審査員として参加した船村先生は

「あの汚い4人組が一番面白い」

と一番評価したバンドが

デビュー前の

ビートルズだったとか。

さすがです。

改めて、

偉大なる

船村徹先生のご冥福を

お祈り申し上げます。

 

村田