教員採用試験の面接では、多くの自治体が教師候補者に対して、子どもや保護者への対応方法を評価する場面指導の設問を設けています。特に保護者対応は、教師の職務の中でも特に難易度が高く、受講生の中にはこの部分で苦戦するケースが見られます。保護者対応の難しさの一因は、しばしばそれを煩わしいものと感じ、個々の教師や学校の都合を優先しようとする傾向にあります。これに対して、ある苦情対応のベテランは、対応の成功の鍵はすべての申し出を「苦情」として真摯に受け止めることにあると語っています。過去の調査結果からも、教育分野における苦情対応の課題が明らかになっています。2009年と2019年のデータによると、教育業界では「こちらの配慮不足」を苦情の原因として認める割合が他業種に比べて著しく低いことが示されています。2019年のデータでは、「行政」が最下位で、教育がそれに次ぐ形で下から2番目でした。さらに、苦情の原因として「いちゃもん」「クレーマー」との回答が教育業界では多く、他業界と比べて教育業界が相手に非があると捉えやすい傾向にあることを示しています。この問題に対処するためには、教育現場での研修の拡充が急務です。クレーム対応は技術的な要素が強く、多くの企業では対応研修や専門部署が存在します。教育界でも、保護者対応のスキルを向上させるための具体的な研修を実施し、必要に応じて専門的に対応する人材を配置することが求められます。これにより、教師の負担を減少させることができます。教員採用試験の面接で、保護者対応の出来不出来を判断するよりかは、これらの課題に積極的に取り組むことのほうがより建設的だと考えます。