核兵器の先制不使用「反対報道」に寄せて | 碓井法明オフィシャルブログ「本物をやろう!!」Powered by Ameba

核兵器の先制不使用「反対報道」に寄せて

 

 被爆70年を迎えた昨年12月3日、
広島市議会議員39名による「核兵器廃絶広島市議会議員連盟」が発足した。
人類最初の被爆地である広島市において、
広島市長を会長とする平和首長会議などの活動は行われてきたものの、広島市議会議員による核兵器廃絶に向けた議員連盟の創設がなされていなかった事実を鑑みれば、
創設の意義は極めて重く、今後の活動については、大きな意味をもつものとしなければならない。

 人類最後の被爆地たるべき長崎市においても、本年3月11日には、「核兵器廃絶長崎市議会議員連盟」が発足し、両市議会議員連盟役員による調整を経て、同年8月5日には、本格的な意見交換会を開き、共同記者会見を開催するに至った。
 主な取り組みとしては、両市議会議員連盟間での連絡協議会を設けることで、双方の連携を強化するとともに迅速な対応を可能にしようというものであった。
 そして、8月6日の平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)と8月9日の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典には、それぞれの連盟役員が出席することで核兵器廃絶への誓いを共有することとなっている。

 さて、今月17日、アメリカのオバマ政権で検討されている「核兵器の先制不使用」政策について、安倍首相は「反対」の意向を伝えたとの報に接した。昨日20日、そうした反対報道を否定する旨の発言をおこなったと聞いている。いずれにせよ、オバマ政権の核兵器先制不使用宣言構想の是非について、日本政府は言及していない。

 そればかりか、国連の核軍縮作業部会においては、核兵器禁止条約の制定に向けた交渉を来年の国連総会で開始するように勧告する報告書を賛成多数で採択した。核兵器保有国は不参加、日本は採択を棄権するという状況だった。

 私自身は、被爆者の一人としても、人類史上最初の被爆地広島の市議会議員としても、核兵器の先制不使用政策には賛成である。核兵器なき世界の実現に向けての歩みに反対する根拠は、一切ない。

 核兵器の先制不使用は、核兵器を唯一使用した国が「核兵器のない世界」の実現に向けて歩みだそうとする現実的な行動である。我々も、ただ理想を語るだけではなく、現実に、本物を訴えて、行動しなければなるまい。核兵器の先制不使用については、広島市民、長崎市民をはじめとする日本国民が強い後押しをするべきではなかろうか。

 去る8月10日に、アメリカの核政策の見直しへの日本政府の協力を求めて、広島ならびに長崎市長が連名で、安倍首相と岸田外務大臣へ書簡を提出したと聞く。広島県知事も先般の記者会見では、核兵器の先制不使用については大きな期待をもって支持したい旨の発言があったことは記憶に新しい。

 オバマ大統領の広島訪問をもって、核兵器なき世界の実現へと動き出そうという矢先に、世界で唯一の被爆国たる日本が、自ら核兵器廃絶への機運を後退させ、冷戦時代から変わらぬ核の傘に守られようというのであれば、我々被爆者に残された限りある世界の中では、核兵器なき世界の到来は永遠にこないのではないだろうか。

 核兵器廃絶への具体的な道筋がひらかれようとしている今だからこそ、唯一の被爆国である日本が、核兵器の悲惨さ・非人道性・被爆の実相を世界に強く訴えて、核兵器廃絶へと導いていかねばならない。