「広島土砂災害」平成26年・8・20~H26.08.28広島市議会全員協議会のためのメモ
1.議会の権能 |
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現状と問題点 | 今後の対応 | |
全員協議会の適否 |
・ 災害が発生したからと言って、市議会には「全員協議会を開く必要はない」という意見がある ・ 非常事態に、議会はどう対応する機関なのか? ・ 「非公開で・・」という発想に疑問? |
・ 全員協議会の即時開催 ・ 不要論など、もってのほか! ・ 市議会を公開で行うことに価値がある |
議会としてのスタンス |
・ 議会は、あくまで「行政の問題点や対応ぶりをシッカリと監視しておれば十分」という考え方ではいけない ・ 議会は行政に対して、「如何にして市長や局長の問題点を指摘する」ということに、重点を置きがちになる ・ 市民は政治的な「綱引き」に興味を持たない(参考・東日本大震災の時の、国会の機能不全) |
・ 何でも行政の主導で行い、議会は後でチェックするのでなく、「議会が主導し、行政に執行させる」ことこそが本物 ・ 行政と議会の不毛な対立を避ける ・ 市民から賞賛され、信頼される議会に変身すべき |
災害発生時の議会の対応 |
・ 広島市議会は発生時にどのような対応をしたのか? ・ 安佐南・安佐北区の出身議員はどう動いたのか? ・ ほとんど行政にお任せになっていないか? (東日本大震災の時も、地方議会の顔は全く見えなかった) |
・議会が行政に先立つ形で、独自の調査団を組んで、行動の先頭に立つべき ・調査には専門家やコンサルタントを活用すること ・政務活動費の有効活用 (大規模な詳細調査は執行部の方で行えばよい) |
2.災害発生要因を検証 |
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現状と問題点 | 今後の対応 | |
三大要因 |
・ 都市部で起きた土砂災害としては、「国内で最大」とされる ・ 今回の災害の拡大要因について、複数の識者が①異常気象、②深夜に発生、③地形・地質の問題を指摘 ・ 今回は、特殊な条件が重なった「想定外のケース」か? | ・ 今回のような災害リスクは、「想定外」ではなく、全国どこでも発生する「想定の範囲内」=デフォルト(標準)として備える必要がある |
2.1異常気象 | ||
降雨の特徴 | ・ 今回の降雨の特徴は「極めて強い降雨強度」にして「極めて局所的」であった | ・ こうした特質への理解が重要 |
極めて強い降雨強度 |
・気象庁の安佐北区可部の三入の観測所では、04時に(1時間当たり)98.5mmという観測史上の最大値を示した ・安佐北区の上原(広島市の観測所)では、時間130mmというデータもある (気象庁では時間雨量50mm以上を「強い雨」と定めており、一般的な配水溝や暗渠の設計基準にもなっている) |
・ 可部三入での観測史上の最大値だが、全国どこでも発生する可能性への覚悟が必要になる ・ 背景には地球温暖化問題への対応が問われる |
極めて局所的 |
・ 強い降雨のあった場所は広島市のうちでも、安佐南区および安佐北区の一部に限定される ・ 被災地は南北に13km、東西に幅3km程度とされ、細長く極めて局所的であった ・ この時間に、江波山測候所では僅か9.5mmということは、旧市内では、少雨であったことを意味する ・ 典型的なゲリラ型の豪雨であり、「バックビルディング現象」と説明され、近年はこの手の豪雨が頻発している ・ 降雨の前において、場所を絞りこむことは、難しいとされている |
・ ゲリラ型の豪雨は、事前にピンポイントでの予測は技術的に困難とされている (この点が大きなネックとなっている) ・ ⅹバンドレーダーという最新の観測機器が全国で35基設置され、250mのメッシュでの降雨観測に期待が寄せられている (後述するが、ⅹバンドレーダーはあくまで「観測機器」であって、降雨の「予測機器」ではない) |
強烈な雷を併発 |
・ 強い降雨と同時に、絶え間なく雷を伴い、花火大会のフィナーレのように輝き、強烈な雷鳴が轟いた ・ パトロールカーや有線放送が聞こえないばかりか、落雷に伴う停電で、TVもパソコンも使えない状況を生んだ ・ この雷についても、極めて局所的であったため、被災地域以外の住民はこのことを知らない |
・ 絶え間ない雷鳴で、情報伝達に支障が生じることを考慮しておく必要がある ・ 停電で、TVやパソコンも使えない(携帯、スマホのみ有効)という点も考慮する必要がる |
2.2深夜に発生 | ||
時間帯 |
・ 今回の50mm以上の強い降雨は、深夜の02時~04時に発生した ・ バックビルディング現象で生じる強力な積乱雲は、昼間よりも夜間の方が発達しやすいとされる ・ 今回死亡した人の多くは、寝ているところを襲われ、適切な避難行動がとれなかったことが、生死を分けた |
・ 「強い降雨が深夜に発生しやすい」ということを、避難誘導におけるデフォルトとして対応する必要がある ・ 高齢者等は原則「昼間の避難が望ましい」・・・ということになる (避難対策の詳細は後述する) |
継続時間 |
・ 災害に結び付く降雨には、「①強い降雨+②前後の降雨」という積算雨量の要素が重要になる ・ 強い降雨は20日の未明「02時の28mm+03時の69mm+04時の98.5mm」のわずか3時間という「極めて短時間」に集中した ・ 01~04時の3時間で合計195.5mmに達し、平年の8月一か月分の降雨143.1mmの1.4倍に相当 ・ その前後は、05時の12.5mmと前日21時の15.0mm以外は、10mm未満の少雨に留まっている |
・近年は「極めて短時間」という降雨形態への対応が必要になる ・防災への「心の準備」が非常に難しいという側面がある |
2.3地形と地質 | ||
地形 |
・ 広島市は平地が少なく山の際まで宅地開発がなされており、土砂災害への高いリスクを抱えている ・ その割には、土砂災害に対して、あまりに無防備であり、無策であった (その詳細は後述する) ・ 我が国の地形的な特徴から言って、こうした宅地開発は広島市に限った話ではなく、同様な危険リスクは全国にある |
・ 斜面対策、渓流対策が不可欠 ・ 家屋側の対策も必要 ・ 土地利用計画、宅地開発への規制も必要 (その詳細は後述する) |
地質 |
・ 多くの識者が「風化花崗岩」「真砂土」といった、地山の地質から、「脆さ」「崩れ易さ」を指摘している ・ 岩塊を見れば、「風化花崗岩」以外に、「粘板岩」も多く見られ、地質を単純に十括一絡げで捉えることはできない ・ 「風化花崗岩」は瀬戸内地域には広く分布しており、「粘板岩」も全国の何処にでもある地質である | ・ 地質を理由にするのは適切でなく、3時間で「200mmも降れば、どんな地質でも崩壊する」ことを覚悟すべきである(重要) |
植生との関連 |
・ 地山の安定は植生との関係を抜きには語れない ・ スギやヒノキの人工林は根が浅く、崩壊しやすいことで知られる一方で、今回の被災地(阿武山)は、カシやクヌギなどの広葉樹の巨木が根を張っており、一般には崩壊しにくいとされる ・ にもかかわらず崩壊したものの、筋状の「表層崩壊」に留まってくれ、「面上の崩壊」や「深層崩壊」には至らなかった | ・ 植生面では有利であったのに崩壊したことから、「200mmも降れば、どんな植生でも持ちこたえられない」ことを覚悟すべきである |
3.情報発信を検証 |
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現状と問題点 | 今後の対応 | |
3.1広島気象台の発表 | ||
時系列的な整理 |
・ 広島気象台の発表を時系列的に整理すると次の通り ① 19日21時26分;大雨洪水警報 ② 20日01時15分;土砂災害警戒情報 ③ 同日01時49分;1時間70mm予報 ④ 同日03時49分;記録的短時間大雨情報 ⑤ 今回は「特別警報」は発表されなかった |
・ 気象台の情報提供をもとに、自治体が対応するのだから、よく理解しておく必要がある |
① 19日21時26分 大雨洪水警報 |
・ 広島気象台の「大雨警報」「洪水警報」は各々6~9月を中心に(10年間の過去データによれば)、年平均7回程度(最大22回)発令されている → 注意喚起の意味あいが強く、広島県では5つのエリアに対して警報が出される → 発令回数が多いことから、市民の関心は総じて低いとされている(TV報道より) |
・ 事前の気象情報として、「大雨警報」「洪水警報」は余裕のある情報源だが、一般に自治体の「避難勧告」にはなじまない |
② 20日01時15分 土砂災害警戒情報 |
・ 同様に、「土砂災害警戒情報」は年平均10回前後(我が国全体では約一千回程度)発令されている → 一般的に自治体の「避難勧告」の発令要件とされる → 今回は深夜であったことが、この時点での「避難勧告」の発令を遅らせたとされる |
・ 「土砂災害警戒情報」を自治体の「避難勧告」の発令要件とすべきだが、深夜の場合や、既に降雨の最中での扱いについては、今後詰める必要がある |
③ 同日01時49分 1時間70mm予報 |
・「20日に予想される1時間降水量は多いところで70mm」との情報を広島市にFAXで送信 |
・ 9月2日の新聞報道で「広島市が見逃していた」と指摘している ・ 市は「この情報に気付いていたらどう使うかをこれから検証する」との回答 |
④ 同日03時49分 記録的短時間大雨情報 |
・ 「記録的短時間大雨情報」は、実際の大雨の観測結果をもとに発令される → 災害が起こるおそれのあるときに注意を呼びかける |
・ 「記録的短時間大雨情報」は、降雨の最中あるいは事後的な情報源の一つに過ぎない |
⑤ 特別警報 |
・ 今回は「特別警報」は発令されていない ・ 「特別警報」は気象庁が平成25年から運用を開始し、数十年に一度しかないような非常に危険な状況を指し、自治体は住民に対して避難指示や避難勧告を発令し、「ただちに命を守るための行動」を呼びかける ・ 「特別警報」は、TVの臨時ニュースやテロップを通じた配信がなされ、国民の関心は相当高い |
・ 「特別警報」は台風や発達した梅雨前線などを対象に、広範囲かつ事前予測可能な警報で、今回のような局所的あるいは短時間には対応しない |
3.2広島市の対応 | ||
時系列的な整理 |
・ 広島市の対応を時系列的に整理すると次の通り ① 19日21時50分;防災情報メールで注意喚起 ② 同日22時00分;防災行政無線から注意を呼びかけ ③ 20日01時32分;再び防災情報メール送信 ④ 同日02時41分;三度目の防災情報メール送信 ⑤ 同日02時50分;再び防災行政無線流す ⑥ 同日04時15分;最初の「避難勧告」を発令 ⑦ 同日07時58分;最終的な「避難指示」を発令 |
・ いたずらに市長や行政部局を責めたてるのではなく、議員各自が主体性を持って検証してほしい ・ 情報提供のあり方について、真面目に検証しなかったら、同じ悲劇を繰り返すことになる(重要) |
① 19日21時50分 防災情報メール |
・ 前日21時50分ということは、21時26分に広島気象台が発表した「大雨洪水警報」に対応した最初の情報提供と考えられる ・ メールの送信対象エリアが全市あるいは安佐南区+安佐北区といった広い範囲であれば、その有効性は非常に低いと考えられる ・ 非受信者には、どのように伝達されるのであろうか? ・ 前日の21時50分の時点であれば、夜間ではあるが、「小雨の中での避難」が可能であったと言える |
・ 防災情報メールの登録対象者数、送信対象エリア、その有効性についてしっかり検証すべき |
② 同日22時00分 防災行政無線 |
・ 防災情報メールとほぼ同時に送信されるようである ・ 屋外型と屋内型の2種類がある ・ 防災行政無線は市内の屋外に83か所設置され、そのうち安佐南区には12基設置され、今回被害の大きかった八木地区には設置されていない( → 地元新聞がこの点を9月3日になって大きく報じているのは理解に苦しむ) ・ 屋内受信機(=専用の小型ラジオ)は市内に5300個配置され、設置している家庭が近所に知らせるという仕組みになっている ・ 有効性について、防災情報メール同様の疑問点がある |
・ 防災行政無線の配信対象エリア、その有効性についてしっかり検証すべき ・ 屋外型については設置個所、その性能を把握すべき ・ 屋内型の活用性、近所への伝達システムもしっかり検証すべき (役に立たないのなら、早急に改善・改良をすべきである) |
③ 20日01時32分 防災情報メール ④ 同日02時41分 防災情報メール |
・ 01時32分ということは広島気象台が01時15分発表した「土砂災害警戒情報」に対応した情報と考えられる ・ 今回の土砂災害が目前に迫った時点での防災情報メールであり、既に強い降雨と落雷に見舞われていた ・ この時点で「避難勧告」ではなかった点が、今回問題になっている |
・ 落雷で停電を繰り返していたが、メールは可能なのかも、検証すべき |
⑤ 同日02時50分 防災行政無線 |
・ 防災情報メールとほぼ同時に「土砂災害警戒情報」に対応して、送信されるようである ・ この時点では、未曽有の激しい降雨の最中、落雷の爆音が轟く中で、はたして屋外・防災行政無線が機能したのか?・・・何も聞こえなかったと考えられる ・ 屋内受信機においては、停電の中でラジオの受信ができたのか、近所への伝達は可能だったのか?・・・この仕組みは全く機能しなかったのではないかと考えられる |
・ 激しい降雨と落雷の爆音が轟く中で、どこまで屋外防災行政無線が機能したのかを検証すべき ・ 屋内受信機は、停電の中で受信ができたのか、近所への伝達は可能だったのかを検証すべき |
⑥ 同日04時15分 「避難勧告」 |
・ この時点で、初めての「避難勧告」が発令された ・ 04時15分には、未曽有の激しい降雨が終盤を迎え、すでに同時多発的な災害が発生している最中である ・ この時点では、屋外の指定された施設への避難は全く出来ない(身動きできない)状況にあった ・ 「遅すぎた」という批判が多く聞かれる ・ この「避難勧告」は、ほとんど無意味に終わったと言える ・ NHK・TV報道によれば、「避難勧告」に従う比率は1%以下とされる(社会安全センター長;河田教授) |
・ 担当部局への「遅すぎた」という批判の前に、どの時点で出すべきだったかを示す必要がある (詳細な避難のあり方は後述する) |
⑦ 同日07時58分 「避難指示」 |
・ 「避難勧告」よりも強力な「避難指示」が発令された ・ 「いまさら何を?」との批判も聞かれるが、夜が明けて災害の実態が見えてきた時点での、更なる災害の拡大に対する「避難命令」であった |
・ 「避難勧告」と「避難指示」の使い分けを再定義しておく必要がある |
4.防災対策を検証 |
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現状と問題点 | 今後の対応 | |
4.1ハードの対策 | ||
発想の転換 | ・ 今回は、「時間100mm」及び「3時間で200mm」といったゲリラ型の降雨に対して、甚大な被害が発生してしまった |
・ 従来は「想定外」と考えてきたが、今後は「想定内(デフォルト)」と考え準備する必要がある ・ 防災への「発想の転換」が求められる |
歴史的な考察 |
・ 今回の被災地では、多くの住民が、自分が住んでいる土地が、過去にどのように形成されてきたかを知ることなく住んでいた (無知であった) ・ つまり、阿武山という山塊が、繰り返し流出した土石が堆積した一種の扇状地が形成され、そこに住んでいた ・ この地域の宅地開発は30~50年を経るが、この間には大きな災害が無かったが、歴史的に見れば50~70年毎に土石の流出が繰り返されてきた (前回は1945年の枕崎台風で広島県では2012人の死者を出し、多数の山複崩壊があった) |
・ 自然史においては、歴史は繰り返されるという理解が必要である ・ 地形の歴史から考察すれば、今回の土砂災害は特異な現象ではなかった ・ つまり、硬いコンクリートで完全に塗り固めるよりも、土石流を柔軟に逃がすような発想が求められる |
治山対策 |
・ 背後の山塊は、風化花崗岩という地形地質上の特徴を持つが、広葉樹主体の比較的良好な植生で覆われている ・ しかし、今回の「200mmの降雨強度」には耐えられず、幾本もの表層崩壊の爪痕を残す結果を招いた ・ 八木地区には「砂防ダム」の計画が9カ所あり、2基が建設中、5基が調査中であった ・ 「砂防ダム」で完璧に守られる訳ではないが、大幅に被害を低減できるとされるだけに、未完成が残念であった |
・ 計画中の砂防ダムを完成させると同時に、追加を含めた再検討をお願いしたい ・ 都市部にあることから、景観に十分配慮した設計を行うべき |
渓流対策 |
・ 山複に対して、幅20~40m*深さ2~4m程度えぐられており、今後の小さい降雨でも地山の崩壊を招くであろう ・ 下流部の住居地域における渓流は水路断面として、幅・深さ1~2m程度と小さく、今回は道路が川原と化している |
・ 山複においては、渓流の人工的な復元を行い、植林による再生も必要となろう ・ 住居地域においては、十分な水路断面を確保し、住環境にも十分配慮した設計を行うべき (こうした対応で居住地の価値が高まる) |
土地利用政策 |
・今回災害が起きた地域は、2001年に施行された「土砂災害防止法」に基づく、「警戒区域」や「特別警戒区域」に指定されていなかった(重要) ・広島県の「土砂災害の危険個所」は31,987ヵ所に及ぶが、そのうち「警戒区域」の指定手続きを終えているのは11.834ヵ所で、全体の37%に過ぎない |
・「警戒区域」や「特別警戒区域」への指定は、調査費の捻出や土地の評価額への影響もあるが、人命優先で取り組む必要がある |
住宅等の再建 |
・「土砂災害防止法」の適用を受けない場合は、法的な強制力が伴わないため、防災に対応した住宅再建が出来ない ・再建の前提条件として、法的な指定が急がれる |
・ 「警戒区域」ではハザードマップが整備され警戒避難体制が整備される ・ 「特別警戒区域」では、建築物の構造規制、開発行為に対する私権の制限や建物の移転が行われる ・ こうした法的措置によって、防災意識が高まり、安全・安心につながり、むしろ土地の評価も高まるとの指摘もある |
瓦礫や流木の活用 |
・ 現在被災の跡地は、建物が崩壊し、瓦礫や流木、大量の土石で埋め尽くされている ・ 土石類だけで50万立米あり、市内の仮置き場に搬送しているが、既に受け入れ先の問題が発生している ・ その運搬コストや廃棄処分費は100億円かかるとも言われ、経済性はもとより、地球環境の保全に反する (ダンプ10万台分の燃料+流木等の焼却によるCO2の発生 → 地球温暖化 → 異常気象の発生という負のサイクルを理解する必要がある) |
・ 地球環境の保全に向け、現地で発生したものは、できる限り遠方に運ぶことを避け、現地で有効活用することを提案したい (エネルギーのマイレージ) ・ 土石は現地の造成に活用する ・ 流木は粉砕して堆肥、または燃料に加工して活用する |
被災跡地の公園化 |
・ もとは、住宅が密集し、狭い渓流と、狭隘な道路で、これをそのまま復元したのでは話にならない ・ 特に家屋の損壊の激しかった、渓流の入り口付近を、今後どのように再生するかが問われる |
・ 渓流の入り口には土石を活用したロックフィル・ダムを設け、「防災記念公園」を(大小複数)設けることを提案したい(重要) ・ 亡くなられたお方への鎮魂と後世への防災の教訓とすべき |
防災道路 |
・ 緑井、八木地区の中でも、今回被災した地域の道路網は、小型車しか通れないような狭隘な道路ばかりである ・ ミニ開発が多く、進入路もJR可部線を平面交差で横断し、団地間の横の連絡も非常に悪く、都市計画道路長束八木線の計画があるが一部しか整備されていない ・ こうした、劣悪な道路網が、避難を妨げ、人命救助や災害復旧にさいしても、著しい障害となっている |
・ 我国の手本となるような「防災モデル」に相応しい道路整備を行うべき(重要) ・ このさい2車線の進入路を複数整備し、都市計画道路長束八木線の事業着手を提案したい |
4.2ソフトの対策 | ||
防災リスクの周知 |
・ 大前提として、自分の住宅や事業所の「土砂災害等に対する安全性や危険性」についての知識が不足している ・ 防災に対する知識を、住民が様々な機会を通じて、共有できる機会が不足している |
・ 住民へのハザードマップを用いた説明機会が不可欠 ・ 「土砂災害防止法」の適用に基づく、住民への周知 |
提供すべき防災情報 |
・ 主な情報源としては、気象庁(気象台)が出すものと、地方自治体が出すものがある ・ 情報が少な過ぎるのは良くないが、多すぎると重要な情報まで無視されてしまうという性質を、よく理解しておく必要がある (ここが非常に難しい) |
・ 最終的な重要情報としては、気象庁の「特別警報」と自治体の「避難勧告」「避難指示」くらいであろう |
情報伝達のタイミング |
・ 「避難勧告」や「避難指示」をどの時点で出すか ・ 広島市は、今後見直すとしているが、従来は以下の5項目の一つが出た場合に、推移をにらんで判断するとしていた ① 大雨特別警報 → 今回は無かった ② 避難基準を超す雨量 → 03時頃に100mmを越えた ③ 土砂災害警戒情報 → 01時15分に発表 ④ 巡視によって危険と判断 → 03時30分頃被害発生 ⑤ 土砂災害緊急情報 → 今回は無かった ・ 広島市は04時15分に「避難勧告」を発令し、「遅すぎる」との批判を浴びることとなった ・ 避難が遅れた理由として、「避難所開設の準備」「深夜で豪雨最中での移動」という点が指摘される (2009.08豪雨では兵庫県佐用町の避難勧告により、避難中の5人が死亡し、遺族が約3.21億円の損害賠償を求めて係争中という例もある) ・ 広島市としては、「避難勧告」を出しておけば一定の責任回避は得られるが、どれだけの市民が勧告に従うかを予測しておかないと空振りになる ・ 例えば、今回の例で「避難勧告」は、8月20日から9月1日まで緑井・八木地区の全域に継続中であったが、この勧告に従った人は少なく、地域を「丁・番レベル」に絞りこんだ「避難指示」のみが有効に機能した ・ 過去の調査によれば、「避難勧告」に従う比率は1%以下という低い信頼度にも問題がある(河田教授) |
・ 「避難勧告」を出す理想のタイミングは前日の夕刻( → その為には高い確率での予測技術の開発が必要) ・ 次に、「大雨洪水警報」が出た10時の時点、既に暗いが近ければ容易に避難が可能( → 一般に「大雨洪水警報」を避難の対象にするのはイマイチ) ・ 三番目に、洪水が発生する直前の「土砂災害警戒情報」が出た01時15分の時点(災害発生前の終盤のタイミングであったと言える) ・ 四番目に「1時間70mm予報」が出た01時49分という選択もある( → 今回の場合は相当にリスクが高い選択になる) ・ 五番目に災害の発生が始まっている03時30分頃(極めて限定的な避難になる) |
予知技術の開発 |
・ 的確な「避難勧告」を出すには、事後ではなく事前の予測技術の開発が必要になる ・ 現在の段階では「極めて強い降雨*極めて限定的なエリア」を事前に予測できる技術は確立されていない ・ ⅹバンドレーダーという最新の観測機器を用いれば、観測所の実測データを補完し、250mのメッシュでの降雨観測が可能とされる |
・ ⅹバンドレーダーの活用に期待が寄せられている ・ ⅹバンドレーダーはあくまで「観測機器」であって、降雨の「予測機器」ではないため、このデータに降雨の移動や降雨強度の変化をプログラミングできれば、予測が可能となる |
情報伝達の方法・手段 |
・ 「避難勧告」等の緊急情報の伝達手段は、以下の通り ① 屋外防災行政無線 → 広島市の場合は設置密度が低い、洪水や豪雨、雷鳴で聞こえないとの指摘もある ② 屋内受信機 → 受信感度が悪い、落雷による停電、近所に伝達できるのかという問題がある ③ 防災情報メール → どの程度の登録者がいるのか、パソコンの使えない人にはどうするのかという問題がある ④ パトロールカーによる周知 → ピンポイントでの的確な情報伝達が可能、既に道路が寸断等の場合あり ⑤ TVやラジオでの周知 → これも角度が高いが、これらを見ない、聞かない人もいる 停電の問題がある ・ 今回の場合は、上記のうち①②③はほとんど機能しなかったのではないか ⑤も停電であったため機能しなかった |
・ 複数の伝達手段を選び配信する ・ 重要なことは、「定期的にレビューをしているか?」という点である ・ 特に①②③については、その有効性を十分検証する必要がある |
避難方法の選択 |
・ 避難方法には次のような選択がある ① 安全な避難所への退避が一般的だが、今回のように夜間で暗かったり、避難ルートの安全性、高齢者や弱者の対応、避難所の開錠等をクリアする必要がある ② 上記の移動が困難な時には、安全が確保されることを前提に、近隣に身を寄せる、その為には地域での日頃のコミュニケーションが不可欠となる ③ 既に災害が発生している段階では、安全な方向を的確に選択し、身を寄せる必要がある ④ 屋内の水平移動の場合は、崖下を避けまたは、渓流とは逆の方向へ避難する ⑤ 屋内の垂直移動の場合は、一階から二階へ避難する ・ 各種の報道によれば、今回の災害では①はほとんど機能しなかったが、②④⑤で命を救われた者が少なくなかった |
・ 避難方法は、ケースバイケースで最も安全な方法を選択する必要がある ・ ①が基本であるが、今回のような条件下では(家屋が潰されない限り)、屋内での部屋の水平移動あるいは、屋内の垂直移動で一階から二階へ避難という選択が有効となる |
公助から自助へ |
・ 災害から命を守るには、気象台や自治体の情報に「パーフェクト」を求めることはできない(より危険なケースがある) ・ 土砂災害から命を守るには、次のような前兆現象がある ① 渓流の水位が急増し、濁りが出始めた ② 崖から小石が落下し始めた ③ 土の匂い・焦げるような匂いがする ④ 地震のような揺れ・振動がする ⑤ ペットが落ち着かず、動物が移動を始める ・ 今回の土砂災害も、住民への「何が生死を分けたか」と言う問いかけに、多くを学ぶことができる |
・ 自分の命を守るには公助に依存するよりも、自助による判断と行動が求められる ・ 気象台や自治体の「避難勧告・避難指示」を待つ前に、自らの的確な判断でもって命を守る必要がある ・ 事前の判断と行動が重要で、そのためのサインを見逃さないこと |
5.被災者救済 |
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現状と問題点 | 今後の対応 | |
被災者数 |
・ 災害から1週間を迎える8月27日の時点で、12カ所の避難所に、638世帯、1414名が避難生活を送っている ・ 避難所には行かないで、自宅の二階などに難を逃れて過ごす被災者も多数いる |
・ 被災された方は大変な災難である、明日は我が身、豊かな国=日本として、十分な支援策が施されるべきである |
救援物資 | ・ 都市部での災害とあって、救援物資は十分に用意されているようである | |
炊き出し | ・ ボランティアによる炊き出し等の支援がスタートしている | |
被災者の健康 | ・ 県は22日から災害派遣精神医療チーム(DPA)を用意し、全国で初めて避難所に派遣した | ・ 全国初という、県による避難所へのDPAの派遣は素晴らしい快挙 |
借り上げ住宅 |
・ 広島県と広島市は公営の空き家住宅157戸を用意した ・ 申込者が284世帯と2倍近い競争率である ・ 民間の賃貸住宅を市が借り上げ、提供する準備をしている |
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仮設住宅 |
・ 安佐南区に2か所、安佐北区に2か所の計4カ所に仮設住宅を建設する ・ 工期は約1か月で、入庫できる予定である |
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義援金 | ・ 自治体、銀行、マスコミなどに義援金の受付が用意されている | |
6.復興計画に向けて |
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現状と問題点 | 今後の対応 | |
行方不明者の捜索 |
・ 当面急がれるのは、行方不明者の捜索である ・ 警察・消防・自衛隊からなる総勢3500名の捜索隊の昼夜を徹する活動ぶりには、感謝と共に頭が下がる ・ 行方不明者の捜索は、大量の土石、流木、瓦礫に覆い尽くされ、困難を極めている ・ 災害から1週間を迎え、捜索のピッチが上がってきたようだ ・ 多数の「捜索犬」の活躍も感動ものである |
・ 職務とは言え、感謝をもって捜索活動を見守る外にない |
災害ボランティア |
・ 当面は浸水した家屋の「泥かき」がメインだが、休日には若い人を中心に1300名の災害ボランティアが長靴にスコップを携えて駆け付けた ・ リピートを含む、しばらくの支援を期待したい |
・ この日本は良い国だということを素直に喜びたい |
復興のまちづくり |
・ 都市部で起きた「国内で最大」とされる土砂災害が、広島市で発生した 毎日ニュースで放映され、もはや全国に知られることとなった ・ どのような「復興のまちづくり」を描くべきであろうか・・・まさに全国が熱い眼(まなこ)で注目することであろう |
・ ありきたりの復興に妥協してはダメだ ・ 災害大国ニッポンを明るく照らす、都市型土砂災害への「理想の復興モデル」を描くことを提案したい ・ こうした精神こそが、犠牲となられた方々への鎮魂であり、未来を生き抜く地域住民の誇りとなるはずである(重要) |