震災で浮き彫りになったこの国のガバナンス | 碓井法明オフィシャルブログ「本物をやろう!!」Powered by Ameba

震災で浮き彫りになったこの国のガバナンス



3.11 震災がもたらした未曾有の被害、まるで原爆投下後のヒロシマを思い浮かべるような更地
の出現に、言葉を失うばかりである。 国内外にショックを与えた福島原発の人為的災害による被
爆問題の深刻さ。 まさに、地震・津波・原発の三重苦に伴う国難に直面している。
このたびの 3.11 震災は、有事あるいは緊急時におけるこの国のガバナンス(統治機構)に非常
に問題のあることが露呈した。今回はこの点について主なポイントを述べたい。

● 災害時の東北の連携が弱体
被災地の市町村は役場も破壊されており、情報を統括できるのは県である。しかし、発生から 1
~2 ヶ月は地元の宮城、岩手、福島発の情報発信がほとんど無かったではないか? それに、地
元3県の連携が見えず、 被害の少なかった日本海側の隣県である山形・秋田・青森の支援も希
薄であった。いったい東北6県の連携はどうなっているのか?
例えば、全国から救援隊が現地に向かうにも、各県の道路状況の把握さえ不十分で、福島県
の入口で立ち往生し、燃料などを含む緊急物資が長らく現地に届かないという事態が発生した。
震災情報の発信者として、東京のマスコミにはこうした情報発信ができなかった。 緊急時に最
も身近な関係にある、東北 6 県の協力応援体制が、早急に組めなかったのは残念である。

● 仙台市の中枢管理機能が低すぎる
名将伊達政宗が強固な台地に築いた、仙台市中心部は重大な災害をまぬかれた。この点は
不幸中の幸いだった。
そんな仙台市には、国交省をはじめ国の出先機関が集中しており、東北6県の様々な情報を
統括できる立場にあるはずだ。
しかし、東北の首都「仙台」の中枢機能はまるで機能しなかった。いったい仙台市は何をしてい
たのか? 市内沿岸部(若林区)などの津波で手一杯だったのだろうか? 我々には仙台発の情
報は何も聞こえてこなかった。 これは非常に問題だと思う。

● 東京一極集中の限界
我が国は、ヒト・モノ・カネが東京に集中し、とりわけ情報の分野では、TVや新聞などは統括部
門・キー局は東京集中型のネットワークになっている。
そのため、このたびの震災報道は、東北発ではなく、全ての被災情報を一旦東京に集めて、こ
れに在京の専門家がコメントを加えて、全国に向けて一律に提供している。
このような、東京発の一方向型発信による報道体制では、被災地の求めるローカルな支援情報
が少なく、被災地へのフィードバックの機能を果たせないという問題が判明した。

● 地元抜きの原発対応
情報は、発電所の被災現場から東電本店へ、そして政府や専門機関を経て、メディアへと伝わ
る仕組みであった。この原発情報についてはすでに多くの問題点が指摘されている。
原発情報が、現地ではなく東京で管理されているため、地元の市町はもちろん福島県にも全く
情報が入らず、東京のメディアを通じて知るだけという実態で、この点にも問題があった。 しかも、この重大事に、東電幹部や保安院、原子力委員会などの専門家が現場に出向いて指
揮を執らず、危険作業を全部現場に任せて、彼らは東京のデスクワークでやっている・・・これほど
の無責任があろうか?
原子力を推進してきた専門家が、肝心な時にみんな責任を放棄した訳で、これは、総理が責任
をとって交替すれば、一件落着というような軽い問題ではないはずである。

● もしも関東直下型地震だったらどうなる?
この度の被災地域は、我が国でも人口の少ない地域である。しかも日頃から防災意識の高い
地域で、今回あれだけの甚大な被害を発生した。
(5 月 30 日の NHK クローズアップ現代によれば) 今回は、東京ではわずか震度 5 で都市の損
傷は小さかったのに、交通機関の停止によって約 300 万人の帰宅難民が発生した。
これがもしも、関東直下型あるいは東南海地震だったらどうだろう? 重大な問題が浮き彫りに
なるそうである。 その場合には、首都機能が停止し、国家全体が想定不能なダメージは間違い
ない・・・そういう問題である。
改めて問われる喫緊の問題、「東京一極集中こそ、今後の我が国の最大のリスク!」という危機
感を、今こそ全国民で共有する必要がある。