春
おいしいピッツァが食べたくなってクアトロ・スタッジオーニへ。このお店のピッツァはさっくり薄いクラストが香ばしくて、おおきめの一枚をぺろりと食べられてしまう。一枚おみやげに焼いてもらって、義母に持ってゆく。
義母はドアを左手で開けて出迎えてくれた。右手のあいの花はきれいに開いて蕾もたくさんついていて、もうすっかり義母に同化している。花のすっきりした香とみどりのにおいが部屋中にただよっていて、家ではなく植物園にいるような気分になってくる。あれだけ好きだったコーヒーの香はすっかりしなくなっていて、義母は氷をうかべた水を飲んでいる。この子のために水はなるべくいいものを飲むようにしているの、とあいの花をいとしげになでながら。あいの花を躊躇なく勇、と呼びながら。
帰り道、からだ全体をすっかりあいの花に覆われたひとを見かけた。義母もいずれああなるのだろう。そしてそれはたぶん義母にとってなによりも幸せなことなのだろう。
家に戻って鉢のようすを見る。蕾はさらにふくらんで、花びらのあわせめがくっきり判別できるようになってきた。あと二、三日で花がひらくだろう。勇ではない、だれの骨も髪も栄養分にしていない、ただのしろい花が咲くだろう。
ラボに電話を入れて面会の予約を取ろうとしたら、真野さんがいなかったせいで本人確認の段階で躓いて時間をくってしまった。カプセルIDはさすがに覚えているけれど、真野さんだと顔パス(声パス?)でもう何年もアクセスコードなんて使っていないのだもの。おまけに電話に出たお兄さんが、面会時間をダブルの一時間にしてもらうことと、面会時間中にボディを外に出してやることに対してわけのわからない難癖をつけてくれた。やれ面会時間の延長は事前に申請しないとだめだの(だから電話してるんだっての)ボディをカプセルから出すのはリスクが高いだの(真野さんの許可も降りているし同意書にも署名済みだと再三説明しているのに聞いちゃいない)ごちゃごちゃ言ってらちがあかないので、あきらめて真野さんに電話を折り返してもらうよう頼んだ。カプセルユーザの利用状況も把握できていない新人君でもメッセンジャーボーイくらいはできるでしょ。
間野さーん、忙しいのはわかるけど留守番はもうちょっと仕事のできる子にやらせてください。あと、できたら今日中に返事くださいな。ああ疲れた。
義母はドアを左手で開けて出迎えてくれた。右手のあいの花はきれいに開いて蕾もたくさんついていて、もうすっかり義母に同化している。花のすっきりした香とみどりのにおいが部屋中にただよっていて、家ではなく植物園にいるような気分になってくる。あれだけ好きだったコーヒーの香はすっかりしなくなっていて、義母は氷をうかべた水を飲んでいる。この子のために水はなるべくいいものを飲むようにしているの、とあいの花をいとしげになでながら。あいの花を躊躇なく勇、と呼びながら。
帰り道、からだ全体をすっかりあいの花に覆われたひとを見かけた。義母もいずれああなるのだろう。そしてそれはたぶん義母にとってなによりも幸せなことなのだろう。
家に戻って鉢のようすを見る。蕾はさらにふくらんで、花びらのあわせめがくっきり判別できるようになってきた。あと二、三日で花がひらくだろう。勇ではない、だれの骨も髪も栄養分にしていない、ただのしろい花が咲くだろう。
ラボに電話を入れて面会の予約を取ろうとしたら、真野さんがいなかったせいで本人確認の段階で躓いて時間をくってしまった。カプセルIDはさすがに覚えているけれど、真野さんだと顔パス(声パス?)でもう何年もアクセスコードなんて使っていないのだもの。おまけに電話に出たお兄さんが、面会時間をダブルの一時間にしてもらうことと、面会時間中にボディを外に出してやることに対してわけのわからない難癖をつけてくれた。やれ面会時間の延長は事前に申請しないとだめだの(だから電話してるんだっての)ボディをカプセルから出すのはリスクが高いだの(真野さんの許可も降りているし同意書にも署名済みだと再三説明しているのに聞いちゃいない)ごちゃごちゃ言ってらちがあかないので、あきらめて真野さんに電話を折り返してもらうよう頼んだ。カプセルユーザの利用状況も把握できていない新人君でもメッセンジャーボーイくらいはできるでしょ。
間野さーん、忙しいのはわかるけど留守番はもうちょっと仕事のできる子にやらせてください。あと、できたら今日中に返事くださいな。ああ疲れた。