これが蕾になるのかな
バザーの件、浅川さんとメールで打ち合わせ。できれば裏方仕事にしてほしいと頼み込んで厨房の手伝いにしてもらって、代わりに厨房の子を一人屋台に回すことになった。お客さんも屋台は若い子のほうがいいだろうし。
葉のつけねから出ているとげが昨日より一ミリのびて、わずかにふくらんでいる。色はまだ緑だけれど、これが蕾なんだろう。この段階ではまだ、だれに似ているとかだれの雰囲気があるとかそんなふうにはこれっぽっちも見えない、ただのちいさなとげでしかない。勇の写真にごめんなさいとつぶやいて、それから鉢に水をやる。
勇を喪ったとき、あいの花はまだ都市伝説だった。遠いどこかの星からだれかが持って還ってきた宇宙植物。墓場に植えればそのひとの花が咲く。そんなおとぎばなしの花と勇をむすびつけることなんて、義母も私も思いつきもしなかった。けれどあれからもう八年がすぎて、八年のあいだにあいの花は恋人同士の記念写真より陳腐なファッションになってしまった。下手をすれば、墓地にあいの種を撒かない遺族には個人を偲ぶ気持ちが足りないと陰口を叩かれてしまうくらいに。墓場にはそこかしこにしろい花が咲きほこるようになり、そのうちに、命日に墓場から摘んできた花で身を飾ることが流行し、やがて腕や足の一部を切り裂いて花を植えつけるひとまで現れた。いまではあいの花は、死者を悼み墓場を飾る花ではなく、死者を忘れたくない生者が身を鎧う花になりはてている。
それがいけないということではなく、ただ、ときどき、もともとの星ではあいの花はなんと呼ばれて、どういうふうに咲いていたのだろうかと、ふと考えることがある。
葉のつけねから出ているとげが昨日より一ミリのびて、わずかにふくらんでいる。色はまだ緑だけれど、これが蕾なんだろう。この段階ではまだ、だれに似ているとかだれの雰囲気があるとかそんなふうにはこれっぽっちも見えない、ただのちいさなとげでしかない。勇の写真にごめんなさいとつぶやいて、それから鉢に水をやる。
勇を喪ったとき、あいの花はまだ都市伝説だった。遠いどこかの星からだれかが持って還ってきた宇宙植物。墓場に植えればそのひとの花が咲く。そんなおとぎばなしの花と勇をむすびつけることなんて、義母も私も思いつきもしなかった。けれどあれからもう八年がすぎて、八年のあいだにあいの花は恋人同士の記念写真より陳腐なファッションになってしまった。下手をすれば、墓地にあいの種を撒かない遺族には個人を偲ぶ気持ちが足りないと陰口を叩かれてしまうくらいに。墓場にはそこかしこにしろい花が咲きほこるようになり、そのうちに、命日に墓場から摘んできた花で身を飾ることが流行し、やがて腕や足の一部を切り裂いて花を植えつけるひとまで現れた。いまではあいの花は、死者を悼み墓場を飾る花ではなく、死者を忘れたくない生者が身を鎧う花になりはてている。
それがいけないということではなく、ただ、ときどき、もともとの星ではあいの花はなんと呼ばれて、どういうふうに咲いていたのだろうかと、ふと考えることがある。