ノスタルジア 夏の情景 43 闇 | 文化の海をのろのろと進む

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 うしずのです。

 

 ノスタルジア43回目です。夏の間に最終回まで書くつもりでしたが駄目でした。ごめんなさい。もう秋になってしまいましたが「夏の情景」です。

 

 前回、葉月と二人で祭を楽しんでいた信一でしたが、野球部の嫌な先輩達に言いがかりをつけられ、葉月と引き離されてしまいました。

 

 今回も作中、今の時代にそぐわない感覚や発言、行為がありますが時代設定が昭和なのでお許し下さい。

 

 

 

 架空の町の祭りの日の物語。時代はざっくり昭和50年代です。ちょっとノスタルジックな気持ちになって頂けたら幸いです。

 

 

 

ノスタルジア 夏の情景 43 闇

 

 

 信一は北川達に裏通りにある、空き地へと連れて行かれた。近くに街灯が無く真っ暗な所だった。怖かったが先輩に逆らうのは御法度なので信一はされるがままになるしか無かった。
「星乃、おまえ癪に触るんだよ」
 暗闇から北川の声がした。暗くて顔は見えなかった。
「お前、俺らのこと馬鹿にしてるだろ」
と右側から小淵の声がした。
「いいえ。していません」
 信一は否定した。
「馬鹿にしてるだろうが。俺達が3年なのにレギュラーじゃないからって」
と、今度は左側から沢井の声がした。
「馬鹿になんかしていません。誤解を生んでしまったのなら、僕が悪かったです。ごめんなさい」

 


 信一は謝ったが聞く耳を持ってもらえなかった。
「お前がいるだけで腹立つんだよ。監督にもキャプテンにも一目置かれているし、その上、可愛い女の子とデートだなんて、うらやま・・・・いいや、けしからん」
と、北川の声。
「そうだ。うらやましいんじゃない。不潔だから怒っているんだ」
と、小淵の声。
「そうだ。そうだ」
と、沢井の声。

 


 信一は「いや、うらやましいんだろ」という言葉を飲み込んだ。
「いいか。お前ら。顔はやめとけよ。あと、ユニフォームから出る所だとオニガワラにバレるからな」
「分かってるって」
 その言葉の直後に、信一は腹に痛みを感じた。三人のうちの誰かに殴られたらしい。息が出来なくなり体をくの字にして苦悶した。背中にも何発か衝撃を受けた。
 信一は肩にかけていたスポーツバッグを胸に抱え込んだ。バッグの中に入っているカメラとフィルムを守るためだ。
 その後、背中や頭に何度も衝撃を受けた。
「誰か助けて」と信一は心の中で願った。

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 最後まで読んで下さり、ありがとうございました。